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くものバスてい

作者: 春さくら

 みどり団地のはずれにはくものバスていがあります。

 カメラマンのヤスさんが、そのことをきいたのは、みのりちゃんからでした。そのバスていでまっていると、くもに、のせてもらえるのだそうです。

 小さな女の子のおとぎ話さ…と、ハナでわらっていたヤスさんが、行ってみるきになったのは、みのりちゃんのパパへの取材が はやめにおわったからでした。新聞社にかえれば、つぎのしごとがまっています。それなら、空にいちばんちかい団地をあるいてみるのも、悪くないとおもったのです。

 それに…と、ヤスさんは、おもいました。

 もし、くものバスていの話がほんとうなら、トクダネになります。みのりちゃんの話だと、この団地の子どもたちのなかには、何人も くもにのった子がいるというのです。

 いいえ、子どもばかりか、みのりちゃんのおばあちゃんまで…。「でも、、これは、ないしょなのよ。おじちゃんだから、話してあげたのよ」

と、みのりちゃんは、しんけんなかおで話してくれましたっけ………。 もし、これが事実なら、世界的なニュースになるぞ!

 ヤスさんは、さっきまでハナでわらっていたことなどわすれて、商売道具のカメラをにぎりしめました。くものうえから、写真をとるつもりなのです。

 チェッと、ヤスさんは、したうちしました。

 こんなことなら、みのりちゃんのおばあちゃんも、取材しておくんだったな………と、おもったのです。

 ヤスさんの目に、今年 八十才になるというおばあちゃんのでっぷりとふとったからだがうかびました。まんまるなかおに、ゾウのように小さな目が、いつもわらっている おばあちゃんです。

 あのおばあちゃんがのれるのなら、オレは ぜったい だいじょうぶだな…と、ヤスさんは、あばらぼねのうかんだじぶんのむねをおもいうかべて、ニコニコしました。

「ここだ」

 坂道をのぼりつめたところに、バスていがありました。

 くものばすてえ、と、ひらがなでかいてあります。

空とくものほかには、なにもみえません。プカリプカリとうかんでいた くもが、ヤスさんのこしのあたりに、スーッとちかずきました。

「ふわふわだけど、ぜんぜん おっこちないの。カモメがみたあーいって、みのり いうでしょ? そしたら くもさん、スーッとつれてってくれるの」

 ヤスさん、の耳に、みのりちゃんの すんだこえがひびきました。

そして、ヤスさんのむねには、トクダネ賞をもらって世界一周の旅にでているじぶんのすがたがうかびました。



 そのよる、ヤスさんは、プンプンおこって、みのりちゃんに電話をしてきました。

 1メートルもいかないうちに、おっこちたというのです。

 みのりちゃんと電話をかわったおばあちゃんは、

「それはね、あんたがおもすぎたんだよ。からだじゃなく、心がね」

と、ほっほと口をすぼめてわらいました。



 






  

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