異世界召喚!?
ふわり。
それは唐突に僕の手元に舞い降りた。
薄紫色の和紙のようなふわふわしたそれは不思議と温かさを感じさせるものだった。
「拝啓、見知らぬ誰かへ。もしよろしければ私を救ってください。その時を心よりお待ちしております。 敬具」
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「それで、見知らぬ誰かを助けに行くのか?」
「まさかぁ、何年も前のことだし。」
俺は胸元から薄紫色の紙を取り出す。
「大体、どこの誰かもわからない人をどうやってたすけるんだよ」
「ほんと、そうだよなぁ」
俺の名前は藤宮 九重。
どこにでもいるような男子高校生。
全てにおいて一般的だと自負している。
「全く、この誰かを助けに行けば退屈な日々からも解放されるのかね?」
ん?
……
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「もう昔の話だよう」
私の名前は望月彩華。東京の丸の内でOLをしています。
あれは何年前のことでしょうか…私のもとに一枚の和紙でできた手紙のようなものが届いたのです。
「はぁ、それはそうと彩華も残業大変よね…」
「ええ、そうですね…一日くらい休みが欲しものです」
私はその薄緑色の手紙を弄びながら
「ああ、もし、この人を助けたなら、仕事から離れられるのかなあ」
……
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私の名前は柊 真子。
ごくふつーの小学三年生。
だけど
「柊、また百点か、すごいぞ」
「わぁ、まこちゃん凄い!」
私には何が凄いのかがわかりません。
掛け算?覚えるだけじゃない。
覚えたことをただただ書き写すテストで満点を取ってもうれしい筈がないのです。
ひらひらり。
テストの上に小さな薄黄色の和紙が落ちてきました。
紙には
「拝啓、見知らぬ誰かへ。もしよろしければ私を救ってください。その時を心よりお待ちしております。 敬具」と。
「あははは、もちろん!今からでも行きたいくらいだわ」
ふっ、と
視界が暗転した。
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「ようこそいらっしゃいました!異世界へ!」
視界が元に戻るといきなりそんなことを言われた
そこには立ち尽くす青年とお姉さんの姿が。
「一時間、時間をくれ」
青年はそう言った。
一時間後
「つまり、俺たちはこの異世界とやらに召喚されたということだな?」
「はい!その解釈で間違いないです。」
自分より少し上、中学生くらいの姿をしたその少女は、
「申し遅れました、私はグラスミルシェンと申します!グラスとお呼びください」
未だ状況を理解できていないお姉さんは
「あの!仕事があるんですけど、返してもらえませんか?」
と。
するとグラスと名乗った少女は
「ああ、それについては心配いりません。」
「え?」
「もう、皆さんはあちらの世界には居ないことになっていますから。それに、返すつもりなんて最初から無かったので」
……しばし流れる沈黙。
「は?ちょっと待ちなさいよ、冗談はやめて」
「冗談ではありませんよ、この世界に来たいと願ったのは紛れもないあなたなのですから」
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私はどうやらとんでもないことになってるらしい。
頬をつねっても痛いし、これは夢じゃないようだ
自称高校生の青年と小学三年生とともに呼び出されたのは異世界。なんとも笑えない話だ。
私は異世界人を名乗る少女にある質問をした。「返してもらえないかと」
だが、それはできないと言われた。
私は頭が混乱してしばし何も考えられなくなった。
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ああ、ついに異世界召喚をされたようだ
実はこの時を心待ちにして秘かに筋トレをしていたのだ!
恐らくこの三人の中で一番ワクワクを感じているのであろう
にやけ笑いが止まらない
さぁ、どんな風に俺の退屈を紛らわせてくれるのか
この世界への期待は尽きない
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