第一部 「暁の水平線に」 8
Ⅰ
《フィリピンルソン島 サンタ・アナ パラウィ島》
ルソン島の北端の街サンタ・アナに隣接した小さな島、パラウィ島に榮倉大和を乗せた駆逐艦『桜』は停泊していた。未開の島と呼ばれるパラウィ島だが榮倉が想像していた以上に美しい場所だった。地元の人たちもほとんど足を踏み入れない場所で秘蔵のリゾートスポットといっても過言ではないだろう。
リゾートスポットから少し離れた西側の一角に駆逐艦一隻がすっぽり入るドックが用意されていた。ただよくあるような排水装置類といった便利なものはほとんどなく人の手によって作業は行われていた。
見た限りほとんどがフィリピン人のようだった。
その様子を榮倉はドックの二階からコンテナに座ってみていた。
つい数時間前の戦闘では先陣切って指示を出したがここは榮倉の出る幕はなかった。全員が自分の役割に没頭していて、口を出す余裕もない。少し話をしたアリシアという女の子も作業をやっていた。
ずかずかと言ってくる彼女は少し苦手な部分もあるがそれも含めて榮倉があの時思い浮かべた人物に似通っていて一層胸を締め付けられるような思いだ。
思いを押し込むように持っていたペットボトルの水を飲む。
榮倉のもとに近づく足音が聞こえた。
振り返ると黒髪ロングの少女がいた。
「えっと高谷菜月さんだったな?」
菜月は頷いた。
「大和さん。先ほどは大変助かりました。あなたの指示がなかったらあたしたちは今ごろ海の上を彷徨う羽目になっていました」
「お礼なんて必要ないさ。それは俺も一蓮托生だ。俺のためにやったことだし、ほかのことはそのおまけだ。俺のおかげでみんなが助かったなんて思い上がりはないし、船の乗務員の操艦技術と三池忠久さんの協力があったからこそだ」
「わかっていますよ。それでもお礼ぐらいさせてください。命を救ってもらったのは事実ですから」
「でも結局潜水艦には逃げられたからな。まだまだ詰めが甘い。決定的な攻撃に迫力がなかった」
「……。逃げられたのはこちらに非がありますよ。いちおうソナー音を聞き分けられる乗務員はいたんですが彼女を別の場所に配置していましたし、上部の見張り員も経験不足でした」
「まあ言ってしまえばそれに尽きるな……。それで、そんな話をしに来たのか?」
首を左右に振る。
「そういった込み入った話ではなくてちょっと普通に世間話でもしませんか」
「世間話、ね……」
「はい」
満面の笑みで菜月は笑って見せた。
「例えばスタンダードにまずは大和さんの好きな食べ物はなんですか?」
「これはまた安直な質問だな。好きな食べ物は肉と魚類かな魚は特に白身魚がいいな。寒ブリの塩焼きとか最高なんだよな」
「そうですよね。あたしも塩焼き好きです。あと冬にならないとなかなか売ってないんですけどブリのカマなんて至高の食材です」
「わかってるな。君も魚が好きなのか?」
「どっちかという一番好きなのはスイーツとか果物類などがいいんですけど主食じゃないですからね」
えへへ、と舌を出す。
彼女の一挙一動は素直に可愛らしいと思った。見た目の幼さと相応な感情の起伏に思わず榮倉も自然と笑みがこぼれる。このあどけなさも高谷菜月の魅力のひとつなのかもしれない。
「君ってスイーツとかケーキとかに目がないんじゃないか?」
「そうなんです! 特にケーキは最高の嗜好品だと思います! でもよく分かりましたね」
「俺の妹もそうなんだ。中学生のくせに毎日のように買い食いしているし、たまに自分でケーキとか作っててビックリするよ」
「大和さん妹さんがいたんですか。ずっと一人っ子だと思ってました」
「ずっと?」
首をかしげると菜月は顔を赤くして両手を顔の前で振って否定する。
「あ、いえ! 最初に会ったときの印象ですよ! 決して前から知っていたとかそんなんじゃないですから!」
「お、おう。そうだな」
「でも心配じゃありませんか? 妹さん日本で待ってますし……」
榮倉は頷いた。
一番気がかりなことだ。大事な家族に心配をかけたくはなかった。
「何より俺がどうなったのか、どういう扱いをされているのかもこんなフィリピンの田舎じゃわからないからな。もしかすれば死亡扱いかもしないし、今帰ったら亡霊扱いされそうで怖いな」
「あの、気になるのでしたら日本にある私の会社に確認しましょうか? 衛生電話くらいなら使えますし」
何気ない顔で菜月は言ったが榮倉はまだ20代になっているか、いや、高校を卒業しているかも怪しい菜月が会社を持っているという事実に素直に驚いた。
「確認してくれるのは嬉しいけど君っていくつなんだ? 見た目と言動のギャップがありすぎて理解できないんだが」
菜月は少しふて腐れたような顔をした。
「それってあたしが子供っぽいということなんですか」
「そういうわけ……じゃあ、ないんだけど」
「何ですかその間は!」
むう、とリスのように頬を膨らませる。
「いいですよ。あたしはまだ16ですし。大和さんから見ればまだ子供ですもん……」
さらに榮倉は驚かされた。
菜月が若いということは容姿から予想できていた。若くても社長職をやっているのであれば最低二十歳前半だと思っていた。ただ想像以上に菜月は若かった。
「まさか学生なのか?」
「そうですよ。今は夏休みですからこうして来られています。とりあえず日本の本社に電話しておきますので少し待ってください。というか最初に自己紹介した時に言ったじゃないですか」
「そうだったな。頼むよ」
全く、と落胆しながら返事をするとドックの奥に入った。
菜月と入れ替わりに戦闘時に艦橋にいた三十代後半くらいの男が入ってきた。艦内では慌てていたので気にすることはなかったが仮に彼の存在がなければと思うと背筋が凍り付きそうな感覚すら覚える。
彼が理由も聞かずに榮倉の指示を聞いていなかったらとっくに駆逐艦は海の藻屑になっていた。
「榮倉大和くんだったね。私は三池忠久。さっきは本当にありがとう。助かったよ」
謙遜する三池に榮倉は首を横に振る。
「いえ、三池さんが乗務員の方に催促してくださらなかったらダメでしたよ。いきなり指示されて乗務員の方々も動揺していましたから」
「榮倉くんは謙遜だな。私の方も少し驚いたが菜月ちゃんから人柄とか事情は聞いていたからね。君のことだから重要なのだろうと思ったんだ。結果的に私たちは君に救われるような形になったな」
「事前に俺のことは知っていたんですか?」
菜月も以前から榮倉のことを知っていたようなことは示唆していた。
三池は少し間をおく。
「……。そうだね。少なくとも菜月ちゃんは一年以上前から君に目を付けていたね」
「一年ですか……」
「理由は菜月ちゃんに聞いてくれよ。私はあの子の補佐に過ぎないんでね。余計なことは言いたくないからな」
「は、はい……」
「しかし、よく右からの魚雷に気付いたな。かなり水面反射していたから簡単には見つけられないだろ」
「運が良かったというのもありますね。あの状況だと水上艦である駆逐艦はかなり不利ですから。艦の性能が想像以上に高かった部分も救われましたね。少しでも旋回が遅かったらおそらく被弾していました」
「そうだな。ただ潜水艦を逃がしたのは痛いな……。浮上してくるものだとばかり思っていたが想像以上に硬かったのか?」
「ええ……。おそらく装甲の厚い潜水艦だったんでしょうね。ただ次は逃がすつもりはありませんよ」
「頼もしい限りだ。次があったら最初から操艦指示は君に任せるよ。潜水艦を仕留め損ねたのも我々と君との連携が取れていなかった部分も大きいからな。ところで榮倉くんは『国際連合海軍』のことを知っているかい?」
思いがけない問いに困惑する。
聞いたこともない単語だ。
「知らないもの無理ないよ。これが話題になりだしたのは不明艦が現れたからだからな」
三池はそう言って手に持っていた缶コーヒーを開ける。
缶には水の雫がついているので冷たいコーヒーなのだろう。大手メーカーのコーヒーを一口飲むと三池はつづけた。
「言ってしまえば噂話に過ぎないんで、ありえないと思ったらそのまま捨ててもらっても構わないが一応頭の片隅の置いておいてくれればいいよ。発端はそうだね……。イージス艦こんごうが撃沈されたことからかな」
こんごう。
榮倉は息をのんだ。
榮倉が乗っていた船だ。常識的に考えればその損害は計り知れない。日本に帰ってどのような処分を受けるかもわからない。
不安を余儀なくされている。
「そんなに険しい顔をしないでくれ。仮に榮倉くんがあの場を切り抜けたとしてもどこかのタイミングで起こったことだろうからね。話を戻すとイージス艦が沈んだことをきっかけに対抗戦力を結成しようという案が防衛省内で上がったらしいんだ。どこから話が漏れたのかわからないがアメリカが海軍の大規模な艦隊で反攻作戦を計画していることも露呈していたし、あまりにもこの世界は情報化しすぎている点から不安と恐怖心が余計に煽られているんだ」
「キッカケはわかりましたが重要なことを教えてください。その『国際連合海軍』とはいったい何なのですか」
「なんとなく想像はついているだろうけど不明艦に対抗するためだけに存在することになる国際的な海軍だ。これも知らないだろうけど不明艦は日本だけでなく新たにイギリスにも現れている。こちらもどれほどの現行戦力をぶつけても傷一つつかなかった。おそらく君が相手した潜水艦も同じだろう」
確かに、と同意しようとしたときに違和感を覚えた。
現行戦力が一切効かない戦艦と潜水艦。イギリスに現れた不明艦も同じだ。イージス艦は核兵器を除けば現代の科学の結晶といってもいい人類最強の兵器に入る。半径400キロを鮮明に見渡し、小さなボール一個すら見逃さないその戦力が一切効かない。
だとすれば榮倉たち人類に戦うすべはないように見える。
その上で新たな海軍を作ろうなんて何百兆円もの大金を海に投げ捨てるようなものだ。そこは守りを固めるか対抗策を考えるものだ。
「三池さん。その噂話の信ぴょう性ってどのくらいなんですか?」
三池は缶コーヒーをパイプの上に置くと少し考える。
「7対3でありえないの方が上だね。結局発信元は掴み切れないし、何より現実味に欠けすぎている。現状成す術はほとんどないはずなのにこれじゃあ大金を捨てるようなもの。個人的にも多少の水質汚染や周辺の被害を考慮しても核ミサイルを使った方がましだと思うよ」
「核を使うべきなのかを置いても確かに実情から見てどうしても疑問の方が大きいですね」
三池は頷いたうえで渋い顔をした。
「ただ、私が3割の信ぴょう性を持っているのは一つ噂話が的中しているからなんだ」
自然と体がぴくりと反応する。
「アメリカ軍の大規模艦隊のことだ。あれが出港する時間を正確に言い当てた記事があった。今じゃサイトは削除されたがそのサイトで『連合海軍』の話は確実だと言っていたために私はこの可能性を捨てきれない」
「……。その通りですね。ただ気になるのはそこだけじゃないんです。これはもっとこう間近のことなんですけど……」
三池は怪訝な顔をする。
「この駆逐艦『桜』は一度不明艦の一隻と確実に戦闘を行いました。そのうえで俺たちは確実に攻撃した。それも命中して敵艦への被害もあった。潜水艦が不明艦の一隻でイージス艦の対艦ミサイルに耐えうるのならなぜ」
息をのむ。
「駆逐艦『桜』の攻撃が通用したのか……」
言った榮倉本人も背筋か凍り付くような感覚を覚える。
もしかすれば不明艦の一隻ではないのかもしれないという可能性もあったがそれはないと理由もなく信じ切っていた。
「……。君は本当に恐ろしい男だな。私も今になって気づいたよ。違和感がありすぎる。当たり前のようなことは当たり前じゃないはずなんだ。あの艦隊は特別に」
当然のことだが何かを殴れば自分の拳が痛いように大小はあれどダメージがある。物理の法則はそこまで単純に成り立っていない。
だというのに『日向』は常識を凌駕していた。だとすれば潜水艦だって常識の通用するような相手じゃないはずだ。
しかし現実は駆逐艦の攻撃は通用する、という事実だけが残る。
「信じられないが駆逐艦の攻撃だけが通用するんじゃないかな……」
いや、と榮倉は首を横に振った。
「そうじゃない。旧世代の軍艦だ……。この船は管制システムこそ近代化されているが装甲も兵装の基準も設計もおそらく70年以上前の船だ」
「70年以上……。第二次大戦時代か。確かに私はミリタリーに詳しくないが少なくともこのようなものを過去の資料で見たことがある。そう考えている私の思考が自分でも恐ろしいよ。ただ根拠はないな」
「……。」
無言で榮倉は頷く。
これは推測にすぎない。仮に事実なら状況はややこしくなる。
どうするべきなのか迷っていた。
唸るように考える二人のもとに別の人物の足音が聞こえてきた。
「あ、三池さんいらしていたんですね」
両手でタブレットを持っている菜月だった。
三池は頷くと缶コーヒーを一気に飲んで立ち上がった。
「ちょっと榮倉くんと話がしたくなったんだ」
「でしたら報告は後にしましょうか?」
三池は下がろうとする菜月を制して扉の方へ歩く。
「遠慮しなくてもいいよ。菜月ちゃんの報告の方が私の話より何倍も重要だからね」
「よかったんですか?」
構わないよ、と言い残して三池は入ってきた扉から出て行ってしまった。
小さくお辞儀すると榮倉の方を向き直りタブレットを操作しながら聞く。
「ところで大和さん。いったいどんな話を?」
榮倉はしばらく間を置く。
「……。ちょっとした世間話を」
答えに対して懐疑的な様子だった。
菜月は若干間をおいた。
「……。そうですか」
紛れもなくそうじゃないと勘付いているだろうが菜月はそれ以上聞かなかった。その様子に一歩後ろに引いているような意識を感じた。もう少し踏み込めるだけの魅力を持っているのにその一歩を自ら遠ざけている。
菜月は一息つくとやり直すように咳払いをして切り出す。
「でしたら確認したことの報告をしてもいいですか?」
榮倉は無言で頷く。
「日本での大和さんの扱いは行方不明です。ただイージス艦こんごうの損傷が激しく同じく四人が行方不明扱いになっていますが九割がた死亡したものと見られています。おそらく大和さんも同様かと……」
そうだろうとは予想はついていた。
菜月の話の通りなら生存者は確実に榮倉だけということになる。ハッキリ言って生き残った者の方が精神的に辛い部分がある。脳裏にあのときこうしていれば全員が生き残れたのではないか、自分ではなく別の優秀な人が残るべきじゃなかったか、考えてしまえばキリがなかった。
黙っている榮倉を心配そうに見ていた。
「わかっていたことだ。後ろを向いている余裕も立ち止まっている余裕もないんだ。とにかく今は日本へ帰ることに専念していくしかない」
「そうですね……」
「ただ問題は戦艦の位置だ。あれを避けて通らないことにはどうしようもないな。位置は分かるか?」
突然の質問に少し慌てたようにタブレットを操作する。
「え、えっと……。日向灘沖を低速で南下しています。やはり我々を追っているのではないかと思います」
「そういや聞いていなかったな。なんでフィリピンなんだ? 俺を安芸灘で拾ったんなら近くの自衛隊の基地でもそれができないにしても場所はいくらでもあったんじゃないか?」
「そうなんですけど……。あたしたちのドックは日本で宮崎県しかなくて戦艦の追跡もあったので止む無くフィリピンまで来たんです」
「それなら納得できなくもないが……。まあいいか。だとすると戦艦が日向灘にいるのは痛いな。宮崎に帰るにはどうしてもあの海域に入らなくてはいけない。とりあえずはしばらく様子を見ながら動くしかないな」
榮倉はタブレットの地図を見ながら入念に安全な航行ルートを探す。
航行ルートの熟考している榮倉に反して菜月はどこか落ち着かない様子だった。のどのところまで出て生きている言葉を押しとどめているようだ。
「まだ何かあるのか?」
「……。はい」
しゅんと萎れながら菜月は肯定した。
「重要なことだろうから言ってくれ」
菜月は唇を噛みながら告げる。
「アメリカ軍が……」
まさか、と榮倉の心に暗雲が立ち込めた。
このあとに続く言葉がどっちであるかそれで状況は大きく変移する。
「アメリカ軍がやられました……」
悪い方の予感が的中した。
「……。被害は……?」
「出撃した原子力空母ジョージ・ワシントンを中核にした空母打撃群は壊滅的なダメージを受けました……。詳細はこちらです」
菜月がタブレットを操作して『アメリカ軍の被害報告』という文書を表示する。
内容は原子力空母ジョージ・ワシントン旗艦の空母打撃群は空母一隻、ミサイル巡洋艦と駆逐艦それぞれ一隻ずつ、潜水艦一隻、補給艦一隻を出撃させ、戦艦『日向』撃沈に向け航空機を発艦させ攻撃に至ろうとした。
しかし積乱雲をかいくぐってきた200機近い航空機による奇襲を受け、原子力空母ジョージ・ワシントンは大破、ミサイル巡洋艦、および駆逐艦は撃沈、補給艦炎上の広大な被害を被った。
事実上の完全敗北だ。
水上に取り残された乗務員は後に潜水艦が回収したが死者1000人を上回る歴史的大敗を喫した。
その結果が与える社会的影響は計り知れないだろう。
軍事大国アメリカの敗北はアメリカと対立した国を抑制していた力が弱まることを意味する。抑止力がなくなれば争いは自然と起こりうる。
下手をすれば第三次世界大戦に至ることすらあり得る。
最後に航空機発見の直後に4隻もの新たな未登録艦を発見した。
地図がそこに貼ってあった。どこもバラバラな位置でアメリカが攻撃を行った日向灘沖からも離れているようだが、タイミング的にもこの船からの攻撃とみて間違いないだろう。しかも今回は単純な艦隊決戦による砲撃戦ではなく汎用性の強い航空母艦とみて間違いない。
「……。大げさなのかもしれないが、これは世界が狂うぞ」
焦りと不安が一層増した。
菜月の表情も雲が立ち込めていた。ただ同時にジッと榮倉を見ながら菜月が不思議そうな目をしていた。
「大和さんって冷静なんですね」
「そうか? これでも内心では余裕ないけどな」
「それでもです。大和さんはまだ冷静にふるまうだけの余裕があります。それってやっぱり強さですよね……。あたしにはそれが羨ましいと思えるんです。誰かのため、何かのためにふるまえる強さは本当に……」
榮倉は大きく深呼吸をした。
気持ちを落ち着かせる。
「俺は自分のことしか考えられていないよ。こうしていろいろ考えるのも自分が生き残るためだし、結局はすべて自分のためにやっているにすぎないんだ。それが結果的に君たちや誰かを救ったとしても自分のおかげで助けられたなんて思い上がりはしない。ただ」
榮倉はわずかに笑って言った。
「自分のためであってもそれで誰かが救われるんならそれも悪くねえな」