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大和桜の舞う頃に  作者: 有佐アリス
第一章  赤銅色の――
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第四部 「赤銅の航海者」 2

    Ⅰ



《宮崎県日南市南郷町 栄松島》



 1月2日

 兵器のパワーバランスを崩壊させた艦隊があった。

 世間はそれを《戦人艦隊》と呼び憎しみの対象にしていた。かくいう日本と言う国も艦隊の攻撃を受け延べ800人以上の自衛隊員を失った。この事件がある日本人が《戦人》を嫌う理由は十分だ。世界に知れ渡っている《戦人》の情報は限られている。

 世間一般では《戦人艦隊》の情報は一人の人間の形をしたモノが操作していることしか分かっていない。それが本当の人間なのか、それとも精巧に造られた人工AIのようなものなのか、またはどの種でもない新しい新人類なのか、憶測の情報しか飛び交っていない。

 実態を知っているのは最初に《戦人》というモノと接触した四人と対戦人決戦のために新設された『国際連合海軍』の指で数えるほどの人間だけだった。

 最初に接触した四人はこう思っていた。



『彼女たちと人間に違いはない』



 しかし『国際連合海軍』の総意は違った。

 即刻、彼女たちは処分すべきだとし、正体不明の船を二隻も保有するのは間違いだ、と結論を出していた。

 結論が出てもなお処分が行われないのは四人が二隻の《戦人》を保護しているからだ。

 世界から刺客を送られてもおかしくない状況だったが抑止力となっているのは《戦人》の存在ともう一つある。

 宮崎県の南部にある日南市。そのさらに南部にある小さな町は大型の軍港と変わろうとしていた。海底に杭を差しワイヤーで固定された人工のフロートで形成された浮き島は埋め立てと相違をなす土地の確保の仕方で確立された。埋め立てに比べれば海中のワイヤーのメンテナンスや杭の打ち直しと費用はやたらとかかることが難点だ。

 そのフロートに建設されているのが『国際連合海軍』の第一軍港である栄松島だ。

 すでに建設された船を格納できる巨大な倉庫はすでに一つが使用されていた。

 グレーの船体をした船は分類を軍艦。艦種を駆逐艦と言う。

 魚雷を搭載するために登場した軍艦にはすでにいくつかの損傷が見て取れた。

 傷を負った軍艦を見ているのは車椅子に座った一人の男と黒髪のドイツ人の少女が男の座っている車椅子を押していた。

 傷ついた駆逐艦を見ながら車椅子の男、榮倉大和は嘆息する。


「ずいぶんとこいつには無理をさせたな」


「あなたにしては随分と弱気ね」


 気品のある淑女らしい声をした少女は微笑みながら。


「確かに『桜』には助けられたけれど、この私『シャルンホルスト』だって同じ、いや、それ以上の活躍をしてみせると約束したじゃない」


「そりゃありがたい限りだ。結局のところ『紀伊』も付いてきたし戦力が増えてくれたのは今後のために役に立つとは思うが……。それに問題はそれだけじゃないだろ?」


「私たちの境遇ね」


「分かっていたんだな」


「そりゃあ、この私を誰だと思っているの? 『シャルンホルスト』よ。高貴な私がそんなことすら知らないうちはあなたに協力するなんてことは言えないわ。それに『ビスマルク』と別れた時点で私たちの運命は決まっていたようなもの……」


 暗い顔をしているドイツ人の少女を見て榮倉は大きな声で笑った。


「な、なにが面白いのよ」


 顔を赤めらせる。自然と車椅子を押す手に力が入る。


「高貴あるとか『シャルンホルスト』とか言う割にシャルンは純情だと思っただけだ。素直に何が起こるか分からないから怖いって言っておけば分かりやすいのに気品を装おうとしているあたり素直じゃないよな」


「あなたドイツの幽霊船(シャルンホルスト)をバカにしているの」


「そんなわけないだろ。シャルンの良いところでもあるんだし、わりとそういったところは嫌いじゃないからな」


 余計に顔を赤くしてそっぽを向く。


「バッカじゃないの!」


 典型的なツンキャラのシャルンは嫌々言いながらも車椅子をゆっくりと押してあげた。段差では危なくならないように優しく押し、冷たい潮風を受ける。

 宮崎県の南部のこの街は比較的に雪がほとんどないと言っても過言ではないのだが今年は珍しく一面を真っ白に染め上げていた。シャルンは空を見上げて同胞の友人のことを思い浮かべた。

 榮倉はその友人とシャルンは似た者同士だと言っていた。

 正直、ドイツ人で万人受けしやすい顔立ちに、高貴に振る舞う性格とキャラ被りを互いに気にしていたくらいだ。相違点と言えば友人のほうが好戦的でシャルンは比較的専守的なスタイルであることと友人は金髪のところくらいだ。

 自らの黒髪をいじっているシャルンに気づいた榮倉はすぐにその友人のことを思い浮かべていると直感した。


「また会えるよ」


 シャルンは最初驚いた表情をしたが分かるのも当然か、と息を吐いて極東のこの地から欧州の地にいる友人の無事を祈った。


「そうだと良いわね」

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