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第四部 「赤銅の航海者」 1
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眼下にあるのは赤銅色をした世界。
赤く、赤く、赤く、赤く、果てしなく赤い赤銅色の世界が続いていた。夕焼けよりも赤い空、酸化した血のような赤黒い海、赤い空に浮かぶ太陽は黒くなってまるで世界が反転したような感覚を覚える。
ここはどこだ。
私は何をやっていたのだろうか。
脳裏に過ぎるのはこの赤銅色の世界に入り込むすべてのものを排除することだけだ。
善悪の区別はつかない。
世界を支配しようとする赤銅色の空間は海面を凍結する勢いの寒さに覆われている。
白い息を吐き出しながら自身の手を見る。
まるで死体のように白かった。
もともと白人の自分は白い方だったが今の手はまさしく死体と一緒だと思った。
赤銅色の世界では闘争だけが渦巻いておりそこに人の営みなど微塵もない。私はこの世界に対して向けた感情は一つだけだった。
恐怖……
私の中に残されたのはそれだけだった。




