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大和桜の舞う頃に  作者: 有佐アリス
第一章  鉄血宰相と幽霊船
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第三部 「幽霊船の航路」 6

    Ⅲ



《長崎県 佐世保市》


 米軍の弾薬補給基地を前にした30代後半くらいの男はため息をつく。佐世保は間違いなく日本と言う国の国土であるはずで米軍の所有地ではないはずだ、と強い嫌悪感を抱いていた。

 つい先日に拳銃密輸及び銃刀法違反で拘留されていたが証拠不十分で釈放された。

 とはいえ、厳重な目で警戒されていることには変わりない。

 こちらが明確に動けば察知されるだろう。ただそれはこちらが動いた場合の話だ。こちらが動かなければ誰も動いていることを認知できずにその時を迎える。そしてその日は刻一刻と近づいていた。

 缶コーヒーを開けるとほぼ同時にポケットの携帯が鳴った。


『三池さん。輸送船があの男の船と遭遇しました』


「そうか。それで首尾は?」


『さすがは《戦人》というべきでしょうか。完全に振り切れたと思います。ただ、本当にあの戦人は大丈夫なのでしょうか……。僕からするといつか後ろから撃たれるんじゃないかと気が気でいられないですし、何より、あの戦艦の戦人はあの男と縁があるように思えるのですが』


 ふふ、と三池は思わず笑ってしまった。

 彼とその戦人の事情は知ったことではないが『大和』同士は惹かれあうものなのかと、思った。


「別に縁があったところで彼と『大和』は敵同士だ。何より戦人は私たちの行動に賛同して護衛を受け入れた。それに後ろから撃たれる覚悟はこっちには最初からあるさ」


『ですが……。僕たちには……』


「案ずる必要はない。日本最大の戦艦がドイツの戦艦に負けるわけがないだろう?」


 缶コーヒーを一口飲む。


『それはそうですが……。気になったのですが、その「大和」より大きい船は本当にもういないのでしょうか?』


 ぴたりと動きを止める。

 世界最大の船と言えば戦艦『大和』だ。他にいるとすれば同型艦の『武蔵』くらいだがそれはまだ姿を見せていないはずだ。アメリカ軍の二隻のアイオワ級はすでに北海道にいる。会敵はあり得ない。


「そいつはどういうことだ」


『測量計が誤っている可能性も十分にあるのですが、護衛している「大和」と撃ち合っている船が一回りくらい大きい気がするんです』


 三池はすぐに可能性を模索したが竣工している戦艦に『大和』を超える船はどこにもない。


「そりゃ見間違いだ。そんな与太話をしている暇があれば早急に目的地に輸送をしてくれよ。日本側の部隊の準備はすでにできているんだから」


『分かりました。おそらく合流は元旦かと思いますので成果を期待してください』


 三池は任せる、とだけ伝えて電話を切った。


「さて、どうやら輸送部隊に期待はできないな。問題は今回の件をリークした奴がどこかにいることだが……」


 輸送船は本来なら通常の貨物船にまぎれて出港させたので中身が大量の銃火器であることを知っているのは乗務員と荷物を詰めた一部の人間だけだ。そのなかにドイツの戦人に情報をリークさせた人間が混じっており、今も近くでこちらの動向をうかがっているのだろう。

 見張られるというのはこれほど面倒なことなのかと実感した。

 正直、警察の目よりもそのリークした何者かのほうがかなり巧妙に潜んでいた。だが、三池にはその何者かを探すようなことはする必要はない。

 必要がないのだ。

 たとえ、輸送船が沈められたとしてもクーデターを起こそうとしたという事実が世界に広がれば新しい人脈につながる。

 何分ながらこの世界に不満や生き辛さを感じている若者は数多いる。

 生憎常套句には自信があった。大層な熱弁の末に若者を利用する。


「さっそくだが輸送船の日本人にはその礎になってもらうよ」

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