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再構築
「だから、本来は制度を」
もう一度、僕は言いよどむ。
たった今。
今、僕は何を言おうとしたのだろう。
「――ひっくり返す必要がある、てユーリは考えてるの?」
やはり容赦のない彼女。
こう言うところはまだ、どうにも苦手だ。
「……うん」
その行き着く先に触れられないよう願いながら、僕はうなずく。
ひっくり返す、との表現では穏当に過ぎるのだけど。
「制度疲労を起こしてる部分、それをあらかた、取り替える必要はあるだろうね」
「――ねえ、ユーリ」
問いかけられたのは、ひどく静かな言葉だった。
「その意味を、あなたは分かってるの?」
たっぷり時間を置いて。
ふたたび、僕はうなずく。
「うん。少なくとも、穏当じゃないことを言ってるのは」
「血が流れる――いえ、血を流すことになるのも?」
「……うん。もちろん、できるだけ少ないに越したことはないけど……」
それはともあれ、肯定ではあった。
僕が生まれて初めて行う、流血の肯定。