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鉄の男
彼女は首を振り、結果に言及する。
「――ギリギリ、と言ったところね」
「厳しいね」
「おまけよ。最後のくだりが無ければ、まずまずの点をあげられた」
思わず、僕は苦笑する。
先程、実はかなり恥ずかしいことを言った気がしていた。
さらりと流してくれる方が、僕としてもありがたいし助かる。
「一応、模範解答を知りたいね。ああもちろん、さっきの“教えてくれる”ことの後でもいいんだけど」
「そうね――強いて言うなら、少しかわいげでも持った方がいい、かな?」
一瞬だけ言葉に詰まる。
20も後半な僕に、“かわいげ”は無い気がするのだけど。
「ええっと、ちょっと意味が分からないんだけど……」
少し意地悪げに、彼女は返す。
「普段いろいろ楽しんでる方が、余裕も出るんじゃないかってこと。ある程度余裕がないと、ひどく疑ってばかりしかいられなくなる。だから、楽しむことも覚えた方がいい……鋼鉄の男にでもなるつもりならともかく、ね」