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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1899年、グルジア
93/350

普段着

「じゃあ……」


 改めてコップを握りしめ、中の液体に口づける。

 一口、二口、ほど無くの確信。

 覚えのある鮮やかなぶどうの匂い、それに甘酸っぱさ。

 まぎれもない、僕らの作っている自家製ワインだ。


「――どう?」


 半ばワインの残るコップを置き、僕は答える。


「どう、と言われても……」


 改めてそう言われるとむずかしい。

 いつも通りのおいしさの、ささやかなで実直なワイン。

 普段着に理屈を求められても、その、ちょっと困る。


「そうね――なら質問を変えるわ。どちらの方が大事?」


「そりゃあ――」


 即座に言いかけて、僕は口をつぐむ。


 いま聞かれているのは“どちらが好きか”ではない。

 果たして“どちらが大事か”、だ。

 その訊ね方で、僕は試されているように思われた。


 この後にはたぶん、先ほど言った“教えてあげる”との情報も控えているはず。

 ことと場合によっては、その情報提供さえ中止になるかも知れない。

 そうと分かると、急に悩ましい。

 数瞬、右手を顎に当てて、思案に沈む。


「――こちらの方かな」


 言って僕は、片方のコップに手を伸ばす。

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