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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1899年、グルジア
90/350

赤い滴

 ジョゼファはまず、思い切りよくガラス瓶のワインを開ける。

 その仕草に、僕は自分の観察を疑う。

 大切なものと見えたのは、何かの間違いだったのだろうか。


 確かに、僕は間違っていた。

 瞬間、辺りに広がる、赤ブドウの匂い。

 鮮やかさと奥深さとが、矛盾せず漂っている。


 これは……大切どころか、本当にいいものじゃないだろうか。

 僕らがいつも飲む、普段着のワインとは違った良さを感じる。

 まだ一口も飲んでいないのに、だ。

 この類のワインを、少なくとも僕は飲んだことがない。

 緑茶を飲んではいても、玉露をたしなんではいなかったように。


 おもむろに、彼女はワインをコップに注ぐ。

 ひとつは彼女の分、ひとつは僕の分。

 置かれた瓶には、まだ半分ほどワインが残っている。


「飲んで」


 促され、僕はコップを手に取る。

 なみなみと注がれたせいか、コップから数滴、赤い滴がこぼれていく。


「――いただきます」


 思わず、日本語がこぼれる。

 こんなことはずいぶんと久しぶりだった。

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