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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1899年、グルジア
88/350

塩1トン

 今までも、もちろん泣きたいような状況はあった。


 グルジアに流された。無闇な取引をした。

 軽度ではあるけど、左腕の自由を失いもした。

 己の無力を、痛いほど実感しもした。


 そしてそのたび、手を貸してくれる人はいた。

 少なくとも、このゴーリー――山間の、グルジアの片隅では。


“モスクワは涙を信じない”

 今一度、その意味を噛み締めてみる。

 涙を信じないままに、僕はやって行けるのだろうか。


「――ひとつ、教えてあげるわ」


 見かねてか、食卓を離れながら彼女は言う。

 あの素振りは外、貯蔵庫目的だろう。

 玄関から出て行き、一時的に彼女は姿を消す。


 訪れたのは、僕一人きりの食卓。

 大皿とスプーンは既に片づけられている。

 後にはふたり分の陶器コップと、ガラス製の塩入れ壷が残されている。


 ――ある相手を解したいなら、塩1トンぶんの食事を分かち合うことだ。


 不意に僕は、昔読んだ本の一節を思い出していた。

 僕が彼女に拾われて、もうすぐ5年が経つ。

 彼女と分け合えた塩は、果たしてどれだけの重さになるのだろう。

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