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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1898年、サンクト・ペテルブルク
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願わくば

「いやいや、そう嫌うもんじゃねえだろ。仮にも、お前さんに投資した側だぜ?」


「――恩には着ますが、好きにはなれないですね。それで、今回はこれでいんでしょう?」


 とは言うものの。

 嫌いではないという程度に、僕は好感を抱いてはいた。

 穏当でない組織に属するであろう、知識階級(インテリゲンツィア)の男。

 これもまた、僕の甘さなのかも知れないけれど。


「……まあいいさ、一度言った以上、今回は引き下がる。ただな」


 真剣な様子に変わり、男は言う。


「お前さんがどう思ってるのかは知らねえ。だが同情してやるほどの価値は、あの一家には無いぜ」


 その言葉に、僕は王妃のことを思いだしていた。

 たどたどしいロシア語の、宮廷に打ち解けないでいる王妃。

 娘二人を産んだ上でなお、世継ぎたる息子を望まれている女性。


「その点に関しては、意見が異なりますね」


 確かに、待ち受ける道はむずかしい。

 それでも、決して無理ではないはずだ。


 男から返ってきたのは、半ばの薄笑いだった。


「まあいいさ。じゃあ、またな」


「ええ。願わくば、二度とは」

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