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興味本位
こちらへの興味が失せたなら、今度はこちらが答える側になる。
可能な限り面白がらせ長引かせ、かつ情報を引き出す必要がある。
「そうですね……最初、僕から何を取り立てる気だったのか、なんてどうでしょう」
この質問もまずまず、お気に召したようだ。
促されるように、僕は続ける。
「今の僕は、金銭を持たなくもない。一財産ほどではないにしろ、狙う動機としては十分に思います」
金銭狙いでないのはほぼ確信した上だ。
こちらは比較的早く、財布を差し出す意を示している。
追い剥ぎ目的なら、ここまで時間をかけての会話は避けるだろう。
1月半ば、ロシアの夜。
人目こそ無いものの、一晩中皆無と言い切れるほどでもない。
「金の問題じゃねえのは、承知の上だろ?」
黙って僕はうなずく。
お互いにとっての念押し。
「でも正直なところ、金銭以外の動機だと分かりません。祝祭に出入りしてるのは僕だけじゃない、他に3000は人がいる。はっきり言えば、僕より与しやすい相手、いくらでもいるでしょう」




