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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1898年、サンクト・ペテルブルク
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先行投資

 平たいガラス瓶から、男はウォトカを呑み下す。

 一口、二口。蓋を閉めコート袖で口を拭い、懐にしまう。

 ごく控え目に言って、相当飲み慣れているように見えた。


「そう嫌うなよ同志(タヴァーリッシ)、悲しいじゃないか」


 馴れ馴れしい口調に、僕は拒絶の意を述べる。


「そう同志同志と繰り返さないで下さい。僕はあなたのお仲間じゃない」


 少なくともこの今は。

 男の目が、少しだけ細まる。


「――おい、若造」


 剣呑な響き。


「お前は貸し付けを受けたんだ、その言い方は筋が通らねえだろ。投資(・・)、投資だよ。俺らはな、何も失敗した奴らからまでは取り立てねえ。だがお前さんはたっぷり儲けたんだ、なら利子をつけて返すのが当然ってもんだろうが」


 数十人の救命を、単に投資の儲けと言い切る。

 もちろん、理屈ではそうなのだろう。

 でもそう平然と言い切る男を、僕は好きになれない。


 知らず、にぎりしめた右手に力がこもる。

 村で唯一の爪痕を負った、僕の左腕。

 動きのにぶい左腕が、今さらのように恨めしい。

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