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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1898年、サンクト・ペテルブルク
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取り立て

「……お久しぶりですね」


 言いながら、僕は男の姿を見る。

 真冬のロシア、コートにニット帽の合間から、無精髭の中年顔がのぞける。

 ファスナーの普及はまだだったなと、益もないことを思い浮かべる。

 もっとも、肌身に金属製品をつけていては、手ひどい凍傷は避けがたいのだけど。


 ともあれ、忘れるはずもない顔だった。

 ジョゼファたちの為の天然痘ワクチンを渡し、少なくとも金銭の類はとらなかった男。

 それがなぜ、今になって。


「貸しをな、ちょっと取り立てようと思いたってな」


 かつて遭ったときの様相とは違う。

 相手が自分の手の内にあることを確信した、獰猛な笑み。

 あの時はやはり、本性を隠していたのだろう。


「いくらです」


 考えるより先に、僕は答えていた。

 金ならまた稼げばいい。

 でも、命の方はそうもいかない。

 これから先、起こるかも知れないことを避けるためにも。


 決して、ここで倒れる訳にはいかない。

 少しだけ遅れて、そんな感情が湧いて来る。

 これはたぶん、感じた危険への裏返しだ。


 けれど。


「あまり残念がらせないでくれや」

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