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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1898年、サンクト・ペテルブルク
68/350

魔女と同志

「――いや、そんなことは」


 頭を振り、僕は否定する。

 一瞬だけ垣間見た、赤に染まった大地を。


 少なくとも僕は、もうジョゼファの――全ロシアを治めたという赤い魔女、鉄の女(スターリナ)への――変貌は食い止めたはずだ。

 自由の利く右手で、ぎこちない左腕に触れる。

 両頬に残った痘痕(あばた)とこの左腕が、村を襲った流行り病、唯一の痕跡だった。


 伝記的事実として。

 鉄の女(スターリナ)には、幼少の頃かかった天然痘の跡が残っていたとされる。

 一方、ジョゼファはどうか。

 あの流行り病以降も、彼女の両頬はきれいなままだ。

 僕とは違い、病の姿は跡形もない。


「――久しぶりだな、同志(タヴァーリッシ)


 前方からのその声に。

 物思いを断つように僕は現実に引き戻され、前を見る。


「おやおや、お忘れかな? 感動の再会じゃないか、もっと嬉しがってくれていい」


 忘れるはずもない。

 僕に流行り病への予防手段を渡した男。

 正体不明の集団に僕を招いた、あの男だった。

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