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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1898年、サンクト・ペテルブルク
67/350

ロシア語

 アレクサンドラ皇后のロシア語はたどたどしかった。

 欧州に生まれ祖母ヴィクトリア女王に育てられた女性にとって、それは無理のないことだ。

 婚約しロシアに来て、まだ4年の月日しか過ぎてはいないのだから。


「――ロシア語(ルースキ・イジック)にはいつか慣れる」


 必要に迫られたなら。

 かすかに母語なまりを残しつつ、いつかは覚えていく。

 それが、実用道具としての言葉というものだ。

 僕自身の使う言葉もまた、日々少しずつ変化しているはずだ。


 けれども。


「でも、それだけ(・・)なのかな」


 あの孤立は果たして、言葉だけの問題だったのだろうか。

 きらびやかな、光で統一された舞踏会。

 あの場に新興の、似つかわしくない者が見当たらなかったのも気にかかる。

 それは閉塞と、外に目をふさいでいる事実の裏返しではなかったか。


 そこまで考え、僕は思い至る。

 この先、皇后が宮廷にとけ込めたとして。

 それは本当に、皇后にとって望ましいことなのだろうか。


 どうにも、よくないことが起こりそうな気がしてならない。

 一瞬だけそう思い、僕のいた世界での“この後”を思い出す。

 ことあるごとに、赤に染まっていくロシアを。

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