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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1898年、サンクト・ペテルブルク
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祝祭の冬

「――どうしたものかな」


 1月半ば。

 冬宮殿から一人の帰り道、思わず独り言がこぼれる。

 感心と戸惑い。

 それが僕の、偽らざる本音だった。


 水の祝祭は見事なものだった。

 ネヴァ川と冬宮殿で行われるこの祝祭は、宮殿の恒例行事だと言う。


 若干29歳の皇帝、ニコライ2世。

 25歳の皇后、アレクサンドラ。

 生まれたばかりの皇女たち、オリガとタチアナ。

 取り巻く大勢の、いかにも貴族然とした宝石で着飾った、3000をこえる人々。

 彼らを一度に収める大ホールでの舞踏会は、しばし時間を忘れさせるほどだ。

 エフゲニー氏にひとり招かれた僕は、その様に圧倒された。


 立派。

 立派だったのは確かなのだ。

 けれども――。

 少し考えた末に、僕はたどり着く。

 あの場所はたぶん、あまりに文化的に過ぎたのだ。


 王侯貴族とそれ以外を分け隔て、無言の内に隔離する行事。

 中世でも近世でもない、19世紀も終わろうという時だと言うのに。

 その“甘さ”が僕には、ひどくあやういもののように思われたのだった。

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