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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1897年、グルジア
62/350

定型文

「無論、備えはします。しますが……」


 本当に何もないのかとの視線に、僕は嘘でない答えを言う。


「自分からはこれ以上ありません、後はジョゼファ様にお願いできますか」

 

 これまでのやり取りで、氏はある程度まで気付いたはずだ。

 誰とも知れない者が、辺境の魔術に手を貸していることを。

 であればこそ。


「……いえ。貴殿(・・)のご意見、たいへん参考になりました」


 彼女と交渉したところで結果は分からない。

 こちらが金銭的な条件を一切口にしなかった以上、報酬面での話もむずかしい。

 なれば、これ以上の話をこぼす前に、この場を切り上げるだろう。

 追い打ちをかけるように、彼女は言う。


「遠路はるばる、ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


 儀礼でしかない、定型そのものの言葉を。


「――ありがとうございました。折を見て、我が主に伝えることとします」


 その言葉と共に、報酬の入った財布を僕は受け取る。

 硬貨が主なのもあってか、予想よりもだいぶ重い。

 口が固くなければ、王家の医師は務まらない。

 そしてときには、相手の口を固くするのも仕事の内だろう。

 今回のこれはだから、思いも寄らぬ事故のようなものだ。


 僕たちは何も話さなかった。

 氏もまた何も聞かなかった。

 ただそれだけのことだった。

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