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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1897年、グルジア
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 でも、と僕は思う。

 いったい誰が、この事実たちを言うことができるのだろうか。


 目の前の人間から既に、苦しい心中を垣間見てしまった後に。

 その上でなお、あくまで突き放したまま、事実を話すことができるだろうか。


――それは遺伝子の病気です。遺伝子とはまだ発見されていない概念です。


――対処法は輸血しかありません。輸血とはまだ危険な賭けに等しい行為です。


――つまるところ、現状は祈る以外にどうしようもありません。祈りましょう。


 ……できない、そう僕は思う。

 目の前の他人を突き落とすような真似は、僕にはどうしてもできなかった。

 たとえそれが、事実そのままを告げるだけだとしても。

 苦い自覚と共に、一度僕は結論づける。

 ジョゼファの言う通り、恐らく僕は“甘い”のだろう。


 それでは、一体どうすればいいというのか。

 関わりたくないなら、当たり障りのない言葉でいい。

 介入するつもりなら、抽象的で秘教的な言葉でいい。

 しかし下手な慰めは、エフゲニー氏の求めではないはずだ。


 いったいどうしたことだろう。

 何とか僕が返したのは、ひどく中途半端な言葉たちだった。

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