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取決め
「じゃあ、呼んでくるよ」
「ええ。よろしくね」
何はともあれ、今の仕事に戻るとしよう。
魔女につきそう従者の仕事に。
いったん外に出て、僕は待ち人をいざなう。
「――たびたびお待たせしました、ジョゼファ様はお会いになるとのことです。……では、慣例通り、宣誓いたします」
一呼吸し、一気に言ってのける。
「ひとつ、魔女の存在を公言してはならない。
ひとつ、魔女の存在を公言してはならない。
ひとつ、魔女に虚偽を述べてはならない。
ひとつ、魔女に疑問を抱いてはならない。
ひとつ、喜捨は受術者の望む額とする。
――以上をご承知頂けるのでしたら、どうぞお入り下さい」
ここ1年で言い慣れたはずの文言に、僕は奇妙な緊張を覚えていた。
珍しいタチの客人ゆえだろうか、それとも。
でも先方の反応は、極めて落ち着いたものだった。
「承知しました。よろしくお願いします」
そのままなにがしか前払いしようとする彼を制し、僕は続ける。
「後ほどで結構です。では、中へどうぞ」