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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
【第一部】 1894年、グルジア
5/350

機械

 1億人に及ぶ死者。

 史上初の生物兵器として、アメリカ先住民に用いられた病。

 多くの犠牲者を生み、必然歴史を生み続けてきた流行り病。

 予防接種普及により、1980年以降の患者が途絶えた病。

 僕が知る天然痘は、ざっとこんなところだった。


 歴史的事実として、ジョゼファ・鉄の女(スターリナ)には後遺症があったと言う。

 特に両の頬の大部分に、天然痘の痘痕(あばた)が。

 どういうことだろう。僕は考える。

 彼女の名前と血塗られた魔女の本名。その一致は単なる偶然だろうか。

 それとも、どこかに僕の記憶違いがあるのだろうか。


 思わず、胸ポケットの小型機械(スマートホン)に手が伸びる。


「……あ、そうか」


 試すまでもないように思いつつ、一応電源を入れる。

 画面右上の電波状況を見ても、通信が届く様子はない。


 それはそうだろう。ラジオもTVも、これから数十年後のはずだ。

 インターネットの普及には100年近くを待つことになる。

 偏屈な発明家が最初の小型機械(スマートホン)を発表するのは、正確に113年後だ。

 いやそもそも、コンピュータの発明はいつだったろう。

 電子制御のものができるまで、ざっと半世紀といったところか。

 1894年。その遠さに、あらためて僕はめまいを感じる。


 ……そこで僕はようやく、目の前の相手の不審そうな視線に気付いた。

 謎の金属の塊をさわり、ぶつくさつぶやく青年。

 客観的に見て、怪しい以外の何物でもないだろう。

 少なくとも、100年ほど後までは。


「何をやってるの?」

「……申し訳ない」


 果たして、どう言い訳したものだろう。

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