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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1897年、グルジア
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仕掛け

「では、今しばらくお待ち下さい」


 そう言い残し、僕はテント(パラートゥカ)に戻って行く。


「――今日はあと一人。疲れた?」

「疲れたわ」


 そうは言うものの、口調には冗談の響きが強い。

 童話めいた魔女衣装を身にまとい、ひとり円卓の中央に座る者。

 世紀末の魔術師、あやかしの僧侶、あるいはコーカサスの魔女。

 誰でもない、彼女、ジョゼファの姿だった。


「ユーリの方は?」

「僕は特に」

「本当? でも悪いわね、毎週私につき合わせて」


 言われて、僕は右肩をすくめてみせた。


 元はと言えば、彼女の発案だったのは本当だ。

 彼女は託宣を受けた身であり、僕はその従者。

 それが僕たちの――少なくとも対外的な――お話になっていた。


 このご時世、突然の啓示を受けるのはそう珍しくないらしい。

 啓示というのはつまり、「何々様のお言葉を」とか「誰々の生まれ変わりが」と言った風なことどもだ。

 村の人にしてみれば、巡礼や布教の旅に出ないだけまだ、と言ったところだろうか。

 流行り病を例外的にやり過ごせた功績もあって、僕らの現状はおおむね黙認されている。


 先人たちと僕らの違いは、僕らには本当に力があったことだ。

 彼女の読心と、少しばかりの僕の知識。

 手品の裏側は、つまりはこんなところだった。

 

 彼女の優しさゆえに生まれた、辺境の魔術。

 なまじ本物であるからこそ、僕らは小道具とお芝居を必要としていた。

 手品に見せかけておくためにも、手品は必要なのだ。

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