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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1896年、グルジア
44/350

群行

 流行り病の犠牲者は、若い世代ではただ一人で済んだ。


 予防に手を貸した僕としては、完璧ではないながらも満足のいく成果だった。

 ただ一人、それも生きていける位の症状で済んだのだから。

 致死率40%の流行り病と考えると、上々では控えめ過ぎる表現だろう。


 もちろん、彼女が天然痘にかかることも無かった。

 両の頬も今まで通り、痣や痘痕(あばた)も生まれなかった。

 僕の知る歴史とでは、こうして大きく食い違ったのだ。

 少なくとも、伝承通りの赤き魔女・鉄の女(スターリナ)はもう生まれないはずだ。


 けれども、彼女にとっては違うようだった。

 違うというのはつまり、予防の成果についてだ。

 彼女の方は成果に不満が、もっと言えば後悔があるようだった。


 予防からただ一人、こぼれ落ちた者。

“犠牲者”の名前はユーリ・アリルーエワ――つまり、この僕だった。


 両頬に残る痘痕と、少しだけ動かしづらくなった左腕。

 僕としてみれば、最悪だけは避けられたことに安堵してはいたのだけど。

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