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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1896年、グルジア
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慣行

 言い伝えが事実を歪めることも、事実の断片を伝えることもある。

 僕が知る限り、流行り病の場合はその両方だった。


 いわく、「子供のうち半分が永眠したことがある」。

 おそらく、そう言う年もあったことだろう。

 いわく、「だが(牛の膿である)種痘を打ったら牛になる」。

 これには思わず、「牛を食べたら牛になるのか」と言いかけた。


 言い伝え。

 今の僕にとってその厄介さは、決して他人事ではない。

 いや、他人事ではなかったのだろうし、今このときもそうなのだろう。

 体験談、あるいは直接の顔見知りによる話は、それだけの力を持つ。

 それを覆すだけの歩みは、ほとんどと言っていいほど成されることはない。

 部外者が何を言ったところで、それ以上の、行動を変えるだけの説得力を持たせるのはむずかしい。

 それだけの力を持たせるなら、よほど地域にうまく溶け込むか、あるいは同志(タヴァーリッシ)になるかしかない。


 思うに、僕はまた疲れていたのではなかったか。

 またしても冷静さを欠いていたのは確かだ。

 だが、何に疲れていたというのだろう。

 異国の暮らしに? それとも、母ならぬ国の言語に?

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