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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
349/350

交差

 ――交わることのない、もう一人についても軽く触れておくべきだろう。

 ほかでもない、ロジェストヴェンスキー提督のことだ。


 提督は言い訳しなかった。

 戦後開かれた、ロシアの軍事法廷でも。


  ――すべての敗戦の責任は私にある。

  ――私の部下たちは命令に従った。

  ――決して、部下たちに責任はない。


 そんな訳はない、と僕は思う。

 わざわざ地球を一周させて、艦隊を戦わせた。

 それも、劣悪な補給のままに。

 仮に責任があるとして、ひとり提督の責とは思えない。

 それでも罪があるとすれば、間違えたことだろう。

 仕えるべき相手を間違えたとの。


 けれども、役割・・を知っていたとは言えるかも知れない。

 敗戦の責任という、生け贄の羊の役割を。

 後に海軍公文書館へ収められる手紙には、こう書かれているはずだ。


  ――ロシア国民は私を罰した。

  ――問題は今や、私を罷免するか留任させるかではない。

  ――首吊り刑にするか4つ裂き刑にするか、である。


 提督はしかし、結局は無罪となる。

 ほか4人に下った死刑判決も、減刑嘆願が通り禁錮10年へ。

 服役した将校たちは、1909年中に恩赦が言い渡される。


 この頃にはもう、対馬ツシマの話はされなくなっていた。

 それどころではない雰囲気が、ロシア各地を支配していたからだ。

 いつどこで次の反乱が起こるとも知れない。

 そんな、いつになく張り詰めた空気が。


 しかしながら、提督が恩赦を見ることはなかった。

 その先の、ロシアの行く末を見ることも。


 1909年1月。

 戦争中に受けた傷が遠因となり、提督は亡くなる。

 ――失意の内に。

 そうとまでは、今でも言いたくない。

ブクマ/評価ありがとうございます。いつも励みになっております。

現在は次章の準備中です、しばしお待ち頂けましたら幸いです。

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