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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1896年、グルジア
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「――おや、勉強かな? 面白いかい(インチュリエソ)?」


 そうロシア語で話しかけて来たのは、先程僕が新聞を渡した男だった。

 人当たりのいい、どこにでもいそうな中年男だ。


 僕はほんの少しだけ、手にした辞書の中身、グルジア語について考える。

 共通言語(リンガフランカ)ではない、ほとんど未知の言語。

 僕にとってはほとんどの場合、知らないことを学ぶのは楽しいことだ。

 楽しいことは楽しいけれど、揺れる馬車でもそうだとは言いがたい。

 なので僕は、問いかけへ応えることにする。


「ええ、まあまあですね」


 当たり障りのない答え。

 男にしても、深刻な話がしたい訳ではないだろう。

 乗り合わせたあいだの、他愛もない世間話。

 目的地までの時間が同じなら、その間の暇は短い方がいい。


「そうか。若い人はいいな。たっぷり時間がある、存分に学ぶといい」


 聞く限り、綺麗な発音(インターナツェ)

 こう言ってよければ、都会に暮らす人間のそれだった。

 つまり、字を読めてもそれは当たり前であり、ある日に熱を出した子どもが朝に死んでなどいない地域の。

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