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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
338/350

責務

「三権分立。これが皇帝陛下はお嫌いだ。君もこの言葉、習っているだろう」


 無論、聞き覚えはあった。

 だがそれは学び舎の頃。

 今となっては、遠い昔の話だ。


「習ってはいますが、交代や責任の分散どうこうの解釈は初耳です」

「私の意見だからね。だが、全く独自な代物でもない」


 やはり、分かるようで分からない。

 曖昧なまま頷き、先を聞く姿勢になる。


「つまるところ、制度にも旬があるという事だよ。冬が明け春になる、やがて果実がとれる。だからといって、それが冬にも相応しいとは限るまい。乾物にするなり蜜漬けにすることはできる、それでも新鮮さは失われる他無い」

「夏には夏の果実がある、と」

「然り」


 いまのロシアの季節はどうか。

 少なくとも、春や夏ではあるまい。

 厳冬を迎えつつある、短い北国の秋。


「皇帝が、いやどんな名称でも良いが、ともあれ権力を一手にする。確かに手っ取り早い。手っ取り早いが、現代では明らかに危険ということだ」

「たとえどんなに有能であっても……ですか?」

「どんな者でも歳を取る、耳を貸せば踏み外すであろう意見も増える。良くも悪くも、人は変わるものだ。一貫しての有能さなど、期待できるはずもない」


 老宰相は目をつむり、告げる。


「――するのであれば、それは妄想の類だろうな」

「……そうかも知れません」


 全面の肯定ではない。

 彼女ジョゼファの事が頭にあったからだ。

 歳を経てなお、冴えを失わない例外。

 そんな存在に、彼女なら相応しい気がした。


「――そして、一手にすれば、だ。大失敗の責も、否応なく引き受けざるを得ない」

「……この度の戦争のように」

「そうだ。そして皇帝には、まともな交代制度がない――特に、若く健康な皇帝には」


 制度外の交代・・であれば、ロシアには珍しくもない。

 だが老宰相もまさか、それを望んではいまい。

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