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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
337/350

制度

「皇帝の存在は、制度としては時代遅れ……ですか」

「然り。君の郷里も、そこから移行して久しいはずだろう」


 15年前の帝国議会選挙のことと、すぐに気付いた。

 とは言え、経緯を言うのも簡単ではない。

 移行中ではあるものの、久しいとも言いがたい。


「仰る通り、半ば移行してはいますね。選挙権を持つものが少ない、まだ制限選挙ではありますが」

「歩み出しただけ進歩だよ。後は、その歩みを違えなければいい」


 確かに、そうなのかも知れない。

 男子限定での普通選挙成立は20年後。

 完全な普通選挙の成立はさらに20年後、1945年になるはずだった。


「何しろ我らがロシアは、まだ歩み出してすらいないのだから」

「強大な力を持つ国が、ですか」

「強大さと時代遅れは両立することもある――もっとも、両立し続けるのは不可能だろうが」


 強大さ。

 ロシアのそれは、大いに傷ついた。

 アメリカに仲裁までされた、この度の戦争で。


「とは言え、だ。選挙それ自体に利点はない、と私は見ている」

「ならば、何に?」

「交代だよ。権力の交代を可能にする制度、それ自体だ」


 分かるようで分からない。

 曖昧に頷き、先を促す。


「凡庸な者が傑物を生む。素晴らしい、存分に活躍して頂きたいものだ。しかし、逆ならどうか。 それも、傑物が皇帝であったなら」


 今の皇帝が傑物である訳はない。

 互いに、それを承知の上の話だ。


「愚物が息子であればまだいい、傑物の目が及ぶだろう。だが孫ならどうか。さらには曾孫、玄孫の代なら――たとえ傑物でも、そこまで目が及ぶまい。また、及ぶと見るべきではない」


 思い当たる節はあった。

 代を追うに従い、血縁関係者は増える。

 中には、皇帝の名を悪用する者も出ることだろう。

 血筋以外、何ひとつ取り柄を持たぬ者であればあるほど。

 恐らくそれは、完全に防ぐことなど出来ない。

 予防・・出来るとすれば、それは。

 浮かびかけた考えを打ち消し、僕は言う。


「そのための議会、その為の交代制度ですか」

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