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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
334/350

数字

「ずいぶんと、曖昧ですね」


 はっきり、言葉にした。


「僕よりは分かっているはずと、そう思っていましたが」

「――何しろ、数字が違うからな」


 口調にも、やや苦さが交じる。

 これもまた、本音なのだろう。


「1離れると付いて行くのがやっとになる、2離れると極めて難しい。あくまで、私の持論だがね」

「なら、彼女ジョゼファは……」

「本来、私の理解の及ぶところではない。それだけは確かだ」


 認識を述べつつも。

 その口振りは、さすがに淡々とではない。

 濃すぎるコーヒーを含んだような表情。


「5の私が遠く及ばない。ゆえに、7か8と推測した。しかし――」


 老宰相は口ごもる。

 わずかに、何かを言い出しかねる様に。


「しかし、だ。見えている者ならば、見えていない振りをする事もできる」

彼女ジョゼファ が、それ以上かも知れない、と?」

「あるいは。その可能性は否定できない所だ」

「そこまでして、なにか得があるとは思えませんが……」


 奇妙に、間が空いた。

 何かを恐れるかのように。


「――相手、つまり私に合わせたなら、そうなるかも知れない」

「あなたに分かるよう、敢えてレベルを合わせている、とでも?」


 下げている、とまでは言いかねた。

 さすがに気の毒な話だろうから。

 静かに頷き、老宰相は続ける。


「あまりにかけ離れていては、理解不能と言うだけに止まるかも知れない。それならば少し近づき、分かり易くする、そうすることで得る利はある。半端に手を出せば火傷しかねない、とね」

「それは……確かに」

「加えて、だ。稀に、何か薄い、あるいは欠けている者がいる。名誉でも金銭でもいい。たいていの者は、ひとつとして満たされない。そして、ひとつ満たされれば他を欲するものだ」


 なるほどと僕は思う。

 たいていの場合、そこから推測可能なのだろう。


「しかし、ごく稀に、それらが欠けた者もいる――およそ世俗からは計れない者が、ね」

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