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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
331/350

ウォッカ

「――私の話は、こんな所だ。そろそろ、君の話をしても良いかね」


 それはつまり、老宰相が質問する側に回るということ。

 わずかに考える。断る理由は、特にない。


「ええ、もちろん」

「では、端的に聞こう――君の方は、彼女をどう思っている?」

「僕が、彼女ジョゼファを……ですか」

「そう。他でもない、君がどう思っているのかを」


 今度こそ、僕は考え込む。

 まともに聞かれるのは初めてな気がした。

 片や皇帝一家お気に入りの寵臣。

 片や一介の革命家見習い。

 どうしたものだろう。

 今となってはその関係を、簡単に言う事ができない。


「相棒……でした」


 何とか、その言葉が出た。


彼女ジョゼファはかつて、僕の相棒でした」

「ふむ、過去形なのかね」

「……相棒だと、今そう言い切ることはできません」


 屈託。

 言ってしまえば、そうかも知れない。

 主導権を持ったつもりでいた。

 対等のつもりでいた。

 そして。

 そう、僕は甘かったのだ。

 今ようやく、そう認めることが出来る。


「今は、少しだけ恐ろしい。以前の自分の察せなさが。今さら過ぎたことを悔やむだなんて、どうにも甘い感情なのかも知れませんが」

「――ウォッカを飲むのは自由だよ」


 老宰相の瞳に、複雑な感情が入り交じる。

 その中の慈しみは、本当である気がした。


「だが君は飲み過ぎだ。あるいは、飲み足りていない」


 仮に、それがほろ酔いだとして。

 僕はいったい、何に酔っているのだろう。


「甘いとまでは言うまい。だが青い、それは事実だ」

「ずいぶんと、親切ですね」


 敵対分子への助言ともとれる行為。

 事と次第によって、警告では済まされない。


「――ほんの礼だよ。君の力で、ともあれ助かったのは事実なのだから」


 確かにそうだ。

 でも決して、それだけでは無いはず。

 何か確信のようなものを、このとき僕は抱いていた。

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