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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
330/350

信頼

「お考えについて、分かりました」


 予言・・、あるいは予言めいた事どもに頼る国。

 そんな状況で、やるべき事とは何か。 

 他でもない、追い込まれた状況の解決だ。

 急場をしのいだとして、また陥るようでは話にならない。

 予言頼みはだから、問題の棚上げでしかない。

 たとえそれが、どんなに正しい未来視だとしても。


「今はもう、古代ギリシャを気取る時代じゃない。託宣に頼るのは、確かに危うい橋でしょう」


 その場しのぎの繰り返しは、やがて信用を壊していく。

 蓄積するヒビ割れは、やがて堤防を砕くに至る。

 決壊。こうなると、もはや取り返しはつかない。

 ゆえに、予言頼みは危うすぎる橋という事になる。

 ゆめゆめ渡らない、渡らないに越した事はない橋。

 そう考えたとして、納得はできる。


「……では、彼女ジョゼファについては、どうです」


 納得はできる、けれども全面的にではない。

 一介の市民である彼女を頼り、病弱な世継ぎの世話を任せる。

 表立ってでこそないが、国外の旅に子供を同行させもした。

 それは確かに、信頼には違いない。

 けれどもそれは、本来は向けていけないはずのものだ。

 信頼という名の、堤防の亀裂。


「率直に言って、あなたが良い顔をするとは思えませんが」


 度を越した、皇帝の重用。

 先行きが危ういのではないか、そう思う者も出てくる。

 憶測ですらない、ただの事実だ。

 そこに目をつむることは、今の僕にはまだ出来ない。

 ひとたび目を開けてから、それを無かったとする事は。


「――むろん、進言はしたよ」


 重い腰をあげるように、老宰相。


「事実を述べよう。進言はした、というだけだ。特に皇后は、聞く耳をお持ちではない。国民にとってどうかはさておき、皇后にとって子供の救い主であることは確かだ。重用もある意味、仕方がないこととは言える」

「問題はない、と?」

「仕方がないことと問題がないこととは別だよ。現状、私は疎まれている、というのが偽らざる所だ。証拠に、今もって私と皇后とに面識はない」

「……まさか」


 考えにくい告白に、思わず本音がもれる。


「事実は事実だよ。そして皇帝もまた、ジョゼファ氏を外す気は微塵もない」

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