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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、ポーツマス
328/350

自力

「と言うことは、ですよ」


 わずかに考えながら、僕。


「僕の秘密に、自力でたどり着いたのでしょうか……あくまでも、自力で」

「部下による調査報告。それを自力と言えるならば、そういう事になる」


 彼女ジョゼファ を経由してなら、分からなくもない。

 何であれ、あの魔女じみた話術を以てすれば。

 手練手管の老宰相といえど信じさせられるはずだ。

 けれども、そうでないならば。


「なるほど、先を伺っても?」

「大仕事を終えた後だ、構わんよ」


 余裕とはまた違う。

 単純に、時間が空いたからという口調だった。

 何から触れたものだろう。

 選択肢の中から、ひとつを切り出す。


「では。どんな調査結果でしたか」

「異様に察しがいい、一律にそう書かれていたよ。無論、細かな表現は違ったがね」

「あたかも最初から、先々を知って(・・・・・・)いるかのように(・・・・・・・)、と?」

「ふむ、そこまで直截ではなかったな」


 何とはなしに、察しはついた。

 決して直接ではない。

 けれども、婉曲に触れられてはいたのだと。


「報告書には報告書の文体がある。書いた彼ら、警官は現実的だよ。事実を前に、まずは現実的に(・・・・)考える。それらが相反したならどうか。現実的な考え(・・)の方を優先し、報告に記す。意識することなく、真の姿からは歪めてね」


 糾弾でも嘆息でもない。

 純粋に、事実を事実として述べる口調。


「現実的に過ぎるがゆえに、かえって目の前の事実を見ることができない。時折そんな風に思うことがある――たとえば、そう、君の時(・・・)のように」


 思うに。

 知らずしらず、僕は尻尾を出してはいたのだろう。

 無論、そこそこ隠せてはいた。

 大半の者を目くらませる程度には。

 けれども、一人残らずではなかった。

 隠しそこねた尻尾の先。

 垣間見せただけで、察するに充分。

 少なくとも、そう判断できる人間はいるのだ。

 いまこの時。

 目の前の、この場所に。


「分かりました。では、その次に」

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