自力
「と言うことは、ですよ」
わずかに考えながら、僕。
「僕の秘密に、自力でたどり着いたのでしょうか……あくまでも、自力で」
「部下による調査報告。それを自力と言えるならば、そういう事になる」
彼女 を経由してなら、分からなくもない。
何であれ、あの魔女じみた話術を以てすれば。
手練手管の老宰相といえど信じさせられるはずだ。
けれども、そうでないならば。
「なるほど、先を伺っても?」
「大仕事を終えた後だ、構わんよ」
余裕とはまた違う。
単純に、時間が空いたからという口調だった。
何から触れたものだろう。
選択肢の中から、ひとつを切り出す。
「では。どんな調査結果でしたか」
「異様に察しがいい、一律にそう書かれていたよ。無論、細かな表現は違ったがね」
「あたかも最初から、先々を知っているかのように、と?」
「ふむ、そこまで直截ではなかったな」
何とはなしに、察しはついた。
決して直接ではない。
けれども、婉曲に触れられてはいたのだと。
「報告書には報告書の文体がある。書いた彼ら、警官は現実的だよ。事実を前に、まずは現実的に考える。それらが相反したならどうか。現実的な考えの方を優先し、報告に記す。意識することなく、真の姿からは歪めてね」
糾弾でも嘆息でもない。
純粋に、事実を事実として述べる口調。
「現実的に過ぎるがゆえに、かえって目の前の事実を見ることができない。時折そんな風に思うことがある――たとえば、そう、君の時のように」
思うに。
知らずしらず、僕は尻尾を出してはいたのだろう。
無論、そこそこ隠せてはいた。
大半の者を目くらませる程度には。
けれども、一人残らずではなかった。
隠しそこねた尻尾の先。
垣間見せただけで、察するに充分。
少なくとも、そう判断できる人間はいるのだ。
いまこの時。
目の前の、この場所に。
「分かりました。では、その次に」




