表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、日本海
325/350

上陸

「……そうか。いや、まだそう思ってるかも知れねえが」

「――いまは後にしよう。来るよ」


 目にした一人が、おそらくは村へと去った。

 慌ててはいた、だが困惑してはいない。

 国境の島だ、連絡・・が来ていて不思議はない。

 その連絡は無論、ロシアのものではない。


 一度は去った気配が、程なく増えていく。

 やがて僕らは対峙する。

 もはや見間違えようのない。

 数人ではない、少なくとも十数人。


「14人。村長と若い男たちが、武器になりそうな農具を持って、て所かな――じゃあ、頼むよ」

「ああ、やるか」


 言って、僕らは両手を挙げた。

 僕は空手で、ミドウェーチは銃を掲げて。

 そのまま、熊は手を離す。

 当然、銃はそのまま落下する。

 砂と擦れる間抜けな音がした。

 右目だけで見るとはなく見る。

 鉄の塊は、砂浜に軽くめり込んでいる。

 左目では村人たちを見た。

 いったい何をしているのかとの困惑。


「――まだ伝わってないね。もう一度、頼むよ」


 あくまで両手を挙げたまま、告げた。

 熊は銃を拾い上げ、また落とす。

 鉄の塊が再び、砂浜にめり込む。


 若い男たちは警戒を解かない。

 しかし一番の年寄りと二番目は顔を見合わせ、こちらのことを話し合っている。

 特に声を潜めるでもない。

 むろん、僕には日本語が分かる。

 そんなことは夢に思わないのだろう、異人が怪物がと、かなり明け透けな話だ。

 もっとも、訛りもあって分かりかねる部分もかなりあるのだけど。


 やがて、話がまとまりを見せる。

 若い衆を軽く制しながら。

 代表と思しき村長と補佐役が、こちらへと歩んで来る。


「通じたみたいだね」

「……だろうな」


 熊の口調には、わずかに苦いものが聞き取れた。

 海水にまみれた銃は、確かに役に立ったのだ。

 本来のその役割とは、また違った形で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ