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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、日本海
321/350

密談

「じゃあ今度はこちらも、ひとつだけ良いかな」


 疑問形ではある。

 表向き、疑問形というだけだ。

 たった今。

 先にこちらは、相手の質問に答えてみせた。

 証人・・なら、周囲の5人がそうだ。

 ならば、今度はこちらの番という事になる。

 筋は通る、相手は卑怯でない。

 これを逃す手はない。


「何だ? 内密にするって話なら……」

「誓って欲しいんだ」


 怪訝な顔。

 目的語を伏せたまま、僕は続ける。


「守ることを」

「……それだけじゃ何も言えねえ」

「僕が打ち明ける意味・・。それに、君も意味を感じたなら――きっちり、行動で示す。そう誓って欲しい」

「……物騒だな」

「誤解だよ」


 そう。

 暴力でも不意打ちでもない。

 内容そのものは、その逆と言っていい。


「物騒じゃない、むしろ平和な内容だからね」

「そいつを誓えるのか?」

「誓う。いま誓うよ――の名にかけて、ね」


 僕以外、全員が黙り込む。

 誓い。通例なら無論、皇帝ツァーリにする所だ。

 だが、と僕は思う。

 ここでそう誓ったとて、皮肉にしかなるまい。

 無謀にも、艦隊ごと世界を一周させられて。

 半島の目と鼻の先、惨敗した海戦の後では。


「神の名にかけて――僕、ユーリ・アリルーエフは誓う」


 複雑な思いが交差する。

 ひとつ、僕は神を信じてはいない。

 もうひとつ、彼もまた、今そうかも知れない。


「……なら、いいさ」

「ありがとう。じゃあ、君にも誓って欲しいんだ――君の友人にかけて」


 ふたたび、沈黙。

 今度のそれは少しだけ長い。


「ふざけて、はいねえよな」

「その逆だよ」


 言葉を選び、答える。


「今の君にとっては、別れ別れの友人の方が重い。そう考えたんだ。あとは君に任せる」

「……誓うさ」


 相手の顔に、苦さと笑みとが入り交じる。

 目配せひとつで、僕は先を促す。


「ミハイル・マカロフは、わが友イワン・ラプシンの名にかけて……誓う」

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