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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、日本海
318/350

動揺

「……いや、信じられねえな」


 言いながら、(ミドウェーチ)は首を振る。

 言葉とは裏腹、感情に青が交じり出す。

 おそらくは落ち着きを示す色が。

 困惑も混乱も、一辺倒にはもはや見えない。

 今ひとつ決めかねているとの、それは兆し。


「いったい何が?」

「……全部が、だ」


 その口調も、字面ほど強くはない。


「――じゃあ、先に言おうか」


 ダメ押すつもりで、僕。


「先に君の話を聞くとする。もちろん、僕は話を合わせることが出来る。でも大切な友人と別れた(・・・)ばかりの君に、それは――もし下手な作り話であれば――耐えがたいはず。だから、何も知らないに等しい今、僕のほうが先に言ってもいい」

「……この上、まだ切り札がありやがるのか」

「いや、そういう訳じゃないけれど――」


 演技ではない。

 といって無謀でもない。

 そのまま、素直に押すべきとの判断。

 その点で、切るべき札は既に切っている。

 判断に乗る、そう書かれた札を。

 今まさに、このとき切っている。


「――ともあれ、任せるよ」


 そう僕は重ねる。


「後でもいい、もちろん先でもいい。主役は君だ」


 嘘ではない。

 少なくとも今、その片割れなのは確かだ。

 どちらが前に出るか、まだ決まってはいないけれど。


「君が決めるといい。僕の方は、それに合わせることにするよ」


 そう、どちらだっていい。

 本来、二者択一ですらないのだから。


 目の前の鉄塊を投げ捨てることも。

 はたまた、僕を突き飛ばすことも。

 (ミドウェーチ)の体躯では、造作もないことだ。

 後か先か。

 その枠に乗った時点で、僕に利はある。


「だから、まずは君の方で(・・・・)決めて欲しい――ただ、中身を二人だけで話す位は、譲ってくれると嬉しいかな」


 まず僕が譲った形にする。ならば今度は。

 周囲の目があればこそ、それは縛りになる。

 小さい人間に見られやしないかとの、そんな縛りだ。

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