示唆
使い道。
銃の成れの果て。
海水にまみれた、鉄塊の用途。
そこに武器としての使い道など、あるはずもない。
当たり前といえば当たり前の話だ。
そのことに果たして、気づいているかどうか。
「使い道、だと?」
あるいはそのことを、どう縛って行くか。
「あるって言うのか」
淡い。
激情の色は失せ、困惑の色が増していく。
純粋に、分からないとの兆し。
そう僕は受け取る。
「うん」
肯定。
そして続ける。
「話してもいいよ、君にだけならね」
意味はある。
全員に話したなら、この場の7人――すなわち、残り5人の同意が必要だ。
けれども、相手一人だけならば?
その難しさは、明らか過ぎるほど減る。
「いや、聞きたくないならいいんだ。やっぱり、捨てられて仕方ないかな――それが君なりの弔いなら、ね」
そうなれば仕方ない。
そう思っているのは本当だった。
それはそれで、本当ではあること。
そして。
そこに実感がこもってさえいれば、説得力は生まれる。
「――弔いに、なるってのか」
わずかな手応え。
まっすぐ、僕は見据えた。
沈黙でもって、先を促す。
「お前の、その使い道とやらなら」
分かるはずなど無い。そう僕は思う。
死者の真意など、分かるはずもない。
死者は語らず動かない、ただ黙する。
もし分かると言う奴がいるなら、だ。
人を惑わそうとする者に他ならない。
そしてそのことは、この熊も承知しているだろう。
これが普段ならば、重々承知していたはずだ。
踏まえていたなら、こう聞いてなどいないのだから。
ゆえに、僕は言う。
「分からない」
「何だと?」
「分かる、と言ったら冒涜になるから」
少しだけ、その意の浸透を待つ。
「使い道はあるよ。でも僕は、この場にいない誰かを、勝手に代弁することはできない――だから、弔いになるかどうか? それは分からない、と言うしかない」




