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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、日本海
317/350

示唆

 使い道。

 銃の成れの果て。

 海水にまみれた、鉄塊の用途。

 そこに武器としての使い道(・・・・・・・・・)など、あるはずもない。

 当たり前といえば当たり前の話だ。

 そのことに果たして、気づいているかどうか。


「使い道、だと?」


 あるいはそのことを、どう縛って行くか。


「あるって言うのか」


 淡い。

 激情の色は失せ、困惑の色が増していく。

 純粋に、分からないとの兆し。

 そう僕は受け取る。


「うん」


 肯定。

 そして続ける。


「話してもいいよ、君にだけならね」


 意味はある。

 全員に話したなら、この場の7人――すなわち、残り5人の同意が必要だ。

 けれども、相手一人だけならば?

 その難しさは、明らか過ぎるほど減る。


「いや、聞きたくないならいいんだ。やっぱり、捨てられて仕方ないかな――それが君なりの弔いなら、ね」


 そうなれば仕方ない。

 そう思っているのは本当だった。

 それはそれで、本当ではあること。

 そして。

 そこに実感がこもってさえいれば、説得力は生まれる。


「――弔いに、なるってのか」


 わずかな手応え。

 まっすぐ、僕は見据えた。

 沈黙でもって、先を促す。


「お前の、その使い道(・・・)とやらなら」


 分かるはずなど無い。そう僕は思う。

 死者の真意など、分かるはずもない。

 死者は語らず動かない、ただ黙する。

 もし分かると言う奴がいるなら、だ。

 人を惑わそうとする者に他ならない。


 そしてそのことは、このミドヴェーチも承知しているだろう。

 これが普段ならば、重々承知していたはずだ。

 踏まえていたなら、こう聞いてなどいないのだから。


 ゆえに、僕は言う。


「分からない」

「何だと?」

「分かる、と言ったら冒涜になるから」


 少しだけ、その意の浸透を待つ。


「使い道はあるよ。でも僕は、この場にいない誰かを、勝手に代弁することはできない――だから、弔いになるかどうか? それは分からない、と言うしかない」

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