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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
311/350

不意

 決して責めてはいない。

 そうすれば、こちらの不利だからだ。

 そこは、突くべきはではない。

 なぜなら、突くべきは。


「……申し訳ないよ」


 白々しくならない程度に、僕はおどける。

 仰々しくも、ふざけ過ぎない様に。


「きちんと13種類なかったの、こちらの(・・・・)不手際だ」


 無論、そう一方的な事ではない。

 手札を入れ替えたのはお互い様だ。

 その結果として、13枚が12種類――すなわち、ジョーカーが2枚になった。

 ルール違反は互いのプレイ結果に過ぎない。

 だが。


「でも――ルールに反していた時のこと、決めていなかったね」


 そう。

 無論、僕は勝つ気でいた。

 恐らくは彼女もそうだ。

 結果として抜け落ちた。

 互いが力尽くした結果としての、違反についての取り決めが。


「――でしょ」

「え?」

「あなたは、決して悪いだなんて思っていない」


 不意に、彼女は立ち上がる。

 そして静かに籠を抱え、きびすを返す。

 その後ろ姿に、表情は伺えない。


「それでも、分かったわ」

「何が?」

「あなたが、素直にこちらへ戻りそうに無いこと。今のところは、だけど」


 どこかしら滲む悔しさ、かすかな寂しさ。

 伝わってくる感情を、気のせいと思いたかった。

 そう思いたいだけだ。

 これだけの確信は、初めてと言ってよかった。


「私にも出来ないことはある。相手を心からその気にさせるのも、その内のひとつ」

「……僕は」


 言葉につかえた僕を、彼女がさえぎる。

 有無を言わさぬ、その気配だけで。


「あなたはこの子の事を得た。私はあなたの事を――少しとは言え――得た。お互い、それで十分」


 後ろ向きのまま、告げる。


「――それだけで、十分でなくて?」

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