表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
309/350

反問

「もちろん、条件が違うのは分かってる」


 手癖を始めとした駆け引き、そして隠し札。

 ただ一つを除き(・・・・・・・)あらゆる札が開示された今、物分りが良くなるのは道理だ。

 それはもちろん、目の前の魔女でも例外ではないはずだ。


「全体の手札はもう、あらかた見えてるからね。だけど、もし君が僕なら――僕の立場で、勝負を挑んでいたなら」


 だからこれは、事後の模擬遊戯。

 僕自身に由来する、興味本位の質疑。


「君がどう振る舞っていたか、教えて欲しい。癖を読まれ明らかに先を越された、そんな時に」


 一方で。

 その一方で、決してそれだけではないとも僕は思い始めていた。

 すべての局面において、上に立つことはあり得ない。

 そしてそれは、何も今だけではないはずだ。


 この魔女より()がいるか、それは分からない。

 けれども――歯ぎしりする思いの想像だが――僕より上手(うわて)なら?

 恐らくは居ることだろう。

 今この地上。18億人の中に、幾人となく存在しているはずだ。

 そんな存在と対峙したとき、おめおめ逃げ帰れるとも限らない。


 機会。これはそう、機会でもあるのだ。

 明白に()の者に教えを請える、またとないはずの機会。


「無理にとは言わない。でも」

「――素直さに免じて」


 その前置きは、あくまで静かだった。

 淡々と事実を告げる声色だ。


「あなたは、いつも素直」

「……駆け引きの手数じゃ、人後に落ちないつもりだけど」

「素直さそのものは長所。それは覚えておいて。でもあなたは、必要でない場面でもそう――なにも、仕掛けられた駆け引きにつきあう必要はない」


 癖を見破られたのであれば、対処せざるを得ない。

 対処するなと? いやまさか。

 ならば――なるほど、仕掛け返すという考え方がなかったこと。

 その欠落こそが、「いつも素直」との評価なのだろう。

 必要でないはずの時まで、素直でいてしまうとの。


「癖を見破られた。それは仕方ない。本人が気づかない癖はいくらでもあり得る。でも――見破られたとの察知(・・・・・・・・・)まで、相手に伝える必要はない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ