確認
「――分かったわ」
ようやく、だった。
ようやく、たどり着けた。
拙いなりに、一本取ったとの感覚に。
「でも、揺りかごに触るのは遠慮してちょうだい」
「……手荒な真似は決してしないつもりだけど」
「私もそう思う。でもこの子が、ね」
穏やかな寝息をたてる、わずかに赤みがかった肌の子。
まぶたは閉じられ、瞳の色は分からない。
あるはずの病跡は、はた目にそうとは見受けられない。
この静けさも、と僕は思う。
つかの間のこの安静も、彼女が勝ち得たものなのだろうか。
「この子が、どうなのかな」
「あまり好きじゃないの」
「何が?」
「寝床を変えられるのが」
にわかには信じがたい。
と言うより、すぐには確かめがたいことだ。
「じゃあ、好きじゃないことをされたら?」
「ぐずるわね。それなりに」
それが本当ならどうか?
この子をあやすのに、相応の時間が取られることだろう。
そうなっては確かに、互いに望ましくはない。
「――分かったよ」
無理に確かめなくてもいい。
そう僕は判断する。
「じゃあ、質問に答えて欲しい。条件としては悪くないはずだ」
「ええ。この子が静かに寝ていられるなら、何でも」
「……本当に何を聞いても?」
「お好きなように」
「……ごめん。試すような言い方で悪かったよ」
たぶん、これも甘さではあるのだろう。
目に見える有利を突かないのは。
それでも僕は、彼女に嫌われたくなかった。
目の前の、魔女めいた者に。
「いまから5分。このトランプ遊びに関することだけ聞く、と思う。答えたくないなら答えないでいい。ただ、沈黙で返されるのは困る。時間稼ぎはしないで、答えない旨は告げて欲しい。しつこくはしない、それでいったん引き下がる……と思う」
返答は短かった。
「なら、私も誓うわ――嘘偽りのない答えを」




