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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
306/350

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「――分かったわ」


 ようやく、だった。

 ようやく、たどり着けた。

 拙いなりに、一本取ったとの感覚に。


「でも、揺りかごに触るのは遠慮してちょうだい」

「……手荒な真似は決してしないつもりだけど」

「私もそう思う。でもこの子が、ね」


 穏やかな寝息をたてる、わずかに赤みがかった肌の子。

 まぶたは閉じられ、瞳の色は分からない。

 あるはずの病跡は、はた目にそうとは見受けられない。

 この静けさも、と僕は思う。

 つかの間のこの安静も、彼女が勝ち得たものなのだろうか。


「この子が、どうなのかな」

「あまり好きじゃないの」

「何が?」

「寝床を変えられるのが」


 にわかには信じがたい。

 と言うより、すぐには確かめがたいことだ。


「じゃあ、好きじゃないことをされたら?」

「ぐずるわね。それなりに」


 それが本当ならどうか?

 この子をあやすのに、相応の時間が取られることだろう。

 そうなっては確かに、互いに望ましくはない。


「――分かったよ」


 無理に確かめなくてもいい。

 そう僕は判断する。


「じゃあ、質問に答えて欲しい。条件としては悪くないはずだ」

「ええ。この子が静かに寝ていられるなら、何でも」

「……本当に何を聞いても?」

「お好きなように」

「……ごめん。試すような言い方で悪かったよ」


 たぶん、これも甘さではあるのだろう。

 目に見える有利を突かないのは。

 それでも僕は、彼女に嫌われたくなかった。

 目の前の、魔女めいた者に。


「いまから5分。このトランプ遊びに関することだけ聞く、と思う。答えたくないなら答えないでいい。ただ、沈黙で返されるのは困る。時間稼ぎはしないで、答えない旨は告げて欲しい。しつこくはしない、それでいったん引き下がる……と思う」


 返答は短かった。


「なら、私も誓うわ――嘘偽りのない答えを」

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