表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
302/350

報酬

 2勝3敗。

 数字だけ聞けば善戦だろう。

 あくまで、数字だけ聞けば。

 彼女の宣告に驚きはない。代わりに、奇妙な納得があった。

 僕からの一撃を、そのまま突き返されたとの納得。


「ジョーカーは」


 追い打ちのように、短い声。


「あなたの手札に有るの、それとも」

「無いよ。僕の手札にはね……つまり、提出できない」


 13種類のトランプ。

 6枚と6枚の手札。

 そして伏せ札。


 指定した札が相手の手にないこと。

 伏せた札を当てること。

 この2つは微妙に違う。

 そして今回は、提出できなければ負けと決めていた。

 両者は違う。違うと、そう知っていたはずなのに。

 そこから一歩、踏み込めはしなかった。

 最初に、提出できないはずの札を指定しておきながら。

 その事を見越して、ルールを言えたはずだ。

 そうした所で……おそらくは、そのルールでも承知していただろう。

 目の前の魔女は。


「君の考えた通りだ。指定した札を提出できなければ負け。そこまではいい。でもその指定について、ルールで縛るのを怠った。だから」


 振り絞るように、言い切る。


「これは……僕の甘さだ」

「ふうん――」


 感心した様子で、彼女。


「泣きごと、言わないんだ」

「……まさか」


 ひと息の間。


「先に仕掛けたのはこっちだ。 もちろん、 思ったよ。ギリギリの方法。そう考えたそれを逆手に取られたんだ、こちらが何か文句を言う資格はないよ。でも」


 これはだから、せめてもの意地。 


「でも……せめて、泣き言を言うだなんて思わないで欲しい。そこまで、見下げないで欲しい。僕からは、それだけ」


 初めて、正面を見た。

 瞬間、視線と視線が重なる。

 こうやって交わすのは、いったい何年ぶりだろう。


「――教えてあげる」

「……え?」

「敢闘賞よ。もちろん、あなたが勝ったとき程じゃない」

「この子のことを、かい? 父親のことじゃないなら、何を」


 静かに、僕は制される。

 そうだ。きちんと話すには、落ち着かねばならない。

 平静を取り戻し、次の言葉を僕は待った。


「この子の、母親のこと(・・・・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ