決着
――一度で十分。
それはつまり、当てるということだろうか。
いま伏せている、あの札を。
一回目の僕の指定はジョーカー。
これは彼女が持っていて外れた。
残るは僕の手札6枚と伏せた1枚。
それにもう1枚。
見かけ上は計13種類になるよう、1枚を抜いた。
ただし、何を抜いたかは僕にも分からない。
そこまで意図的であれば、万が一に見破られると危険だからだ。
万が一。
たとえば、一回目に僕が外した場合。
たとえば、たった今のような。
「一回で十分、とはね……」
おそらく、まぐれではない。
純粋に必然としか称せない何か。
彼女から見えていない札はこうだ。
A、3、9、T、J、Q。
それに伏せ札1枚と外した札1枚。
この8枚から、僕が何を持っていないか。
すなわち、偶然に何を伏せたのか。
そう言えるだけの材料は、既に揃っているのだろう。
けれども、何を。どうやって?
それが何なのか、僕には分からない。
その事実こそが、僕の心をなおも傷つける。
目の前の魔女に、もはや及ばなかったのだと。
ゆえに。
「――聞くよ」
ゆえに、僕は問う。
「君の宣告、聞こうじゃないか」
精一杯に、胸を張って。
「ええ」
そうして短く、彼女は答える。
「私の指定は――ジョーカー」
確かに、僕の手札にないカードを。




