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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1896年、グルジア
30/350

進行

 一人のドイツ人が墜落した。高度十数メートル。

 グライダーの飛行中、突風に煽られてのことだった。

 享年48歳。彼の名前は、オットー・リリエンタールと言う。


 空飛ぶ者。イカロスの後継者。鳥類に最も近づいた人間。

  ――まさかこんな結末が。

  ――研究は何十年と遅れるだろう。

  ――これは神の域に近づいた罰なのだ。

 手にしたゴシップ紙には、そんな事どもが記されていた。

 共同研究者であるはずの弟のコメントは、残念ながら見当たらない。


 突然目にしたこともあり、どうにも奇妙な感慨を僕は覚える。

 この時代、人はまだ(・・)自由に空を飛んでいないのだ。

 もし仮に、羽とエンジンとによる浮上を“自由”と呼ぶのなら。


 大空へ。そう羽ばたきかけていたドイツ人は、もはや世にない。

 リリエンタールの仕事は、アメリカの無名の兄妹が継ぐことになるだろう。

 今から7年後、わずかに数人が見守る中、羽持つ機械はキティホークの丘を飛んでいくはずだ。


 それが空にとって、幸せなことなのかは分からないけれど。

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