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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
295/350

順序

 9分足らず、それが残る猶予だ。

 短さを嘆いても始まらない。

 僕はもう、その条件に頷いてしまったのだから。


 ――3分前。

 僕は無理矢理、そう仮定する。

 相手が3分前に来るとする、ならば実質の残りは?

 あと6分、いや5分50秒。

 そこまで考え、ようやく思い直す。

 それは今、考えても仕方ないことだ。


 いくら考えたところで答えの出ることではない。

 あの魔女の行動は、僕に制御可能か? 否。

 ならば手をつけるべきは、制御可能なこと。

 つまるところ、僕自身の行動でしかない。


 5分半でとり得る行動。

 ふざけた観察力を持つ、あの魔女とのババ抜きまがい。

 それを少しでも有利にすること。

 ならば何がしか、やる他にないのだ。

 単なる思いつきを、実行に移すしか。

 際どいとの自覚はある。

 その際どさを、どうギリギリの線上に持っていくか?


 残り5分20秒。

 いや、まずは決まっている部分から動くべきだろう。

 部屋を出、小道具を借りる。まずは確定している行動からだ。

 歩きながらでも考えることは出来るのだから。

 カウンターへの行きやり取りし、ここに戻る。

 ざっと1分、余分に考えられるはずだ。


 いちど部屋を出、カウンターで望む品を申し出る。

 新たなトランプを一セット。

 水と氷と紹興酒、そしてグラスを2つ。

 乗せるお盆と手ぬぐい、台拭きも忘れない。


「――ありがとう」


 短く伝えて、その場を去った。


 足早に部屋に戻り。

 空想に過ぎないそれを、僕は実行に移す。

 まずは卓上を片づけ、ひと通り台拭きでぬぐう。

 元からよく手入れされているのだろう、清掃はひと拭きで終わった。

 卓上にグラスを2つ置き、左手で酒の瓶を――。

 その最中に、魔女はやって来た。

 すやと眠る、赤子を片脇に抱えて。


「――お待たせ」

「早かったね」


 マイナス2秒、すなわち残り2分58秒。

 ほとんど予想通りの時間に。

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