試合3
――迷うな。
そう僕は言い聞かせる。
探るのはいい。
考えるのも構わない。
だが迷うのは。
あらためて、僕は言い聞かせる。
迷うのは後でもいいはずだと。
カードを配り、手札を並べて僕は口にする。
「二回戦。今度は、そちらからだよ」
負けた方、すなわちジョゼファの先攻。
迷わず、宣告が来る。
「Q」
安堵の心を隠しながら、自分の手札を確かめる。
6枚のハートの絵柄。右から2番目に、その札はある。
慌てず騒がず、僕はそのカードを表向きに出した。
その場を支配する、しばしの沈黙。
「――ふうん」
「残念だったね」
無論、緊張はある。
けれども、それを認める余裕はあった。
極度に緊張してはいない。
少なくとも、指にトランプが引っかかる程では。
「……じゃあ、僕の番」
言いながら思考を走らせる。
手元には残り5枚。
手札:37TJK
公開札:Q
こちらから見えていないのは7枚だ。
残り札:A245689
必然、どれか1枚が当てるべきカード、伏せ札になる。
材料はまだ足りない。
足りはしないはずだ。
ゆえに、僕は言う。
「8」
「伏せる」
返ってきたのは素っ気ない声。
呆れも驚きも含まない、およそ平熱の宣告。
思わず、声が出る。
「……あと1ゲームしかないよ」
「ええ。最短では、そうね」
「分かってるなら、いいんだけど」
僕はやっと、そう返した。
僕2-0ジョゼファ
客観的に見れば有利だろう。
それも、考える限り圧倒的な。
そのはずだ。
迷いを振り払うべく、次に使うカードを確認する。
ダイヤマークのAからK、計13枚。
過去の2回と同じく、僕がシャッフルして配る。
相手に6枚、僕に6枚。そして伏せ札。
僕は手札を手に取り、並べ直す。
手札:49TJQK
瞬間、宣告が飛んだ。
「3」
僕の手札に、その数字はない。




