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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
288/350

試合3

 ――迷うな。


 そう僕は言い聞かせる。

 探るのはいい。

 考えるのも構わない。

 だが迷うのは。

 あらためて、僕は言い聞かせる。

 迷うのは後でもいいはずだと。


 カードを配り、手札を並べて僕は口にする。


「二回戦。今度は、そちらからだよ」


 負けた方、すなわちジョゼファの先攻。

 迷わず、宣告が来る。


(クイーン)


 安堵の心を隠しながら、自分の手札を確かめる。

 6枚のハートの絵柄。右から2番目に、その札はある。

 慌てず騒がず、僕はそのカードを表向きに出した。

 その場を支配する、しばしの沈黙。


「――ふうん」

「残念だったね」


 無論、緊張はある。

 けれども、それを認める余裕はあった。

 極度に緊張してはいない。

 少なくとも、指にトランプが引っかかる程では。


「……じゃあ、僕の番」


 言いながら思考を走らせる。

 手元には残り5枚。


  手札:37TJK

  公開札:Q

 

 こちらから見えていないのは7枚だ。


  残り札:A245689


 必然、どれか1枚が当てるべきカード、伏せ札になる。

 材料はまだ足りない。

 足りはしないはずだ。

 ゆえに、僕は言う。


「8」

「伏せる」


 返ってきたのは素っ気ない声。

 呆れも驚きも含まない、およそ平熱の宣告。

 思わず、声が出る。


「……あと1ゲームしかないよ」

「ええ。最短では、そうね」

「分かってるなら、いいんだけど」


 僕はやっと、そう返した。


  僕2-0ジョゼファ


 客観的に見れば有利だろう。

 それも、考える限り圧倒的な。

 そのはずだ。


 迷いを振り払うべく、次に使うカードを確認する。

 ダイヤマークのAからK、計13枚。

 過去の2回と同じく、僕がシャッフルして配る。 

 相手に6枚、僕に6枚。そして伏せ札。

 僕は手札を手に取り、並べ直す。


   手札:49TJQK


 瞬間、宣告が飛んだ。


「3」


 僕の手札に、その数字はない。

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