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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
282/350

租借

 やや喧騒が静まった盛り場に戻り、カウンター越し、主に要件を言う。


「失礼、野暮用でトランプ(カード)が必要なのですが」


了解(リャオヂェ)。でも、どの札?」


 返ってきた台詞に、僕は一瞬答えに窮する。

 52枚とジョーカー1,2枚に慣れた身には、その質問自体が不意にも思えた。

 もちろん艦隊内で遊んだのは、36枚のそれだったのだけど。


「ええっと、一通り、取り揃えているんでしょうか?」


 つまり、国によっての、何種類か揃えているのかということだ。

 この地の交流を考えると、あっても不思議ではない。


不是(ブーシ)。今あるのは英国式カード。英国人、よく置いてくからね」


 何とはなしに、あまり触れないほういい気がした。

 日清戦争の敗北からこの方、当地にいい話は聞こえて来ない。

 盛り場とは言え、景気のいい話ばかりでもないだろう。

 ――もっとも、悪い景気の話ではこちら、ロシアも負けてはいないのだけど。


 諸々を素知らぬ振りで、僕は訊ねる。


「では、それでお願いします。一度確認しても?」


了解(リャオヂェ)


 カードを受け取る。50枚以上はありそうな、印刷紙の束。

 その束を左の手のひらに乗せ、右手で幾度かシャッフルしてみる。

 見る限り、目立つ傷はない。

 細かなそれにしても、特にパターンは見当たらない。

 数戦やる程度なら十分、と言ったところだろうか。


「カウンター、少しお借りします」


 目線で許可を得たことを確認し、4列に並べ枚数を調べる。

 50と少々。僕にとって、慣れた数がそこにあった。

 ……慣れた数?

 覚えた違和感に、僕は訊ねる。


「このカードなんですが、本当に英国式ですか?」


 その内、1枚のカードを見せながら。


「ああ、それは――」


 話を聞いた僕は、心の中で頷く。

 場合によっては、使えるかも知れない。


「それで、大丈夫?」


「はい――謝謝(シェシェ)。では少しの間、お借りします」

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