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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
281/350

仮定

 理屈ぬきの信頼。

 あり得たはずの事が、この時ひび割れた気がした。

 それは今まで、ついに感じたことのない思いだった。

 寂しさと不意の困惑とが、同時に僕を襲ったのだ。


 ――もし、あのとき、彼女が何も話さなければ。

 僕は果たして、勝負を挑んでいただろうか。

 あるいはそのまま、ぶつからずに済んだのではないか。


 思い出していたのは、言葉だった。

 ロシア語でも日本語でもない、ドイツ語の言葉。

 ダス・ライヒ・デア・ツヴァイ――「二人の国」。

 それはもはや、存在しない幻でしかないと言うのに。


信じてくれて(・・・・・・)、ありがとう」


 幻と化したのは、いつの事だったのだろう。

 ペテルブルグ(ピーテル)で別れたときか。

 僕が流行病に襲われたときか。

 それとも、最初からそんなものは。

 自由にならない腕に、心持ち力が入る。


 ――ともあれ、だ。

 このときの僕は、既に挑んでしまったのだ。


「育児で疲れてるよね、手っ取り早いゲームにしよう」


「ええ、助かるわ」


「どんなものか、僕が決めても?」


「提案は任せる」


 ともあれ勝負を、ほとんど聖女めいた相手に。


「分かった。じゃあひとまず――トランプ(カード)、持ってくるよ」


 そうして僕は、一度部屋を出た。

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