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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
279/350

離乳

 部屋奥の寝床、かたわらには小さな瓶が置かれている。

 縦長のささやかなガラス製品は、吸う部分こそ裸でも、ひと目で哺乳瓶と分かる。

 中身は見当たらない。先程まであげていたのだろうか。


 物思いをよそに、寝床にそっと、赤子が横たえられる。

 部屋を満たす、小さく静かな吐息。

 寝かした子を起こさない、いかにも慣れた手つきに見えた。


 その手つきに、不意に思い出すことがあった。


「――離乳食はどうしてる? ハチミツとか、使ってたりする?」


 振り向いた彼女は、わずかに考える顔。


「使ってないわ」


「それならいい。一応言っておくと、あれ、小さい子供にはあげない方がいいよ」


「理由を聞いても?」


「細菌、あまりよくない類の微生物がいる。大人では大丈夫でも、小さな子供は危なくなることもある」


 どこか計りかねていた顔が、納得に変わった。

 少なくとも、こちらの意は伝わったらしい。


「――ありがと。覚えておくわ」


 垣間見た素直さに。

 ほんの少しだけ、穏やかな思いがした。

 これから挑むつもりの勝負(・・)に、ひどく似つかわしくない思いが。

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