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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1905年、上海
278/350

賭け

 お互いに、精神面では(・・)変わりがないのだろう。

 変わりがあるのはだから、道連れ(・・・)の方だ。


 直接会うことのない数年。

 決して短くはない年月だ。

 ――赤子が生まれ、育つ位には。


 小さな背の低いテーブルごし、粗末な木の椅子に座る彼女。

 その両腕の中では、子どもが静かに眠っている。

 可愛がられている、とひとまず言っていいはずだ。

 見る限り、2歳に少し届かないくらいだろうか。


 当たり前ながら、一人では出来ることと出来ないことがある。

 子どもは、その内のひとつだ。

 たとえ彼女が、聖女(マリア)めいた資質の持ち主でも。


 何故とは聞かなかった。

 ただ、誰とは聞いておきたかった。


「さっきまで騒がしくてね、ようやく寝付いてくれたわ」


「おめでとう……と言うべきなのかな。誰とかまでは分からないけれど」


「――つまらない人よ」


 事もなげに、彼女。


「つまらない、素朴な人。もっとも、あなたと比べると――だけど」


 少なくとも、真正面から答える気はないのだろう。

 だから言葉が口をついた。


「勝負してくれないかな」


 口にした後で。

 この言葉は、ひどくもっともなように思われた。

 焦燥ではない。怒りとも違う。

 なぜもっと早く言わなかったのかとの、奇妙な納得。


「――何の?」


 さすがの彼女も、不意をつかれたのだろうか。


 こちらの意を図りかねた口調。

 それだけで十分、言い出した甲斐があるというものだ。

 直接答えぬまま、僕は言う。


「単なるゲームだよ。ちょっとした遊びって奴」


 相手の思案は一瞬だった。


「――あなたが満ち足りるなら、受けていい。もっとも――何を(・・)賭けるかにもよるけれど」

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