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魔王少女スターリナ  作者: 祭谷一斗
1904年、北海、ドッガーバンク
274/350

緩衝

「――いったん、お開きにしましょう」


 そう僕は提案する。


「この後、提督がどう動くかは僕の知るところじゃありません。ただ、緊急時に下士官と会合していたとなると微妙だ。こうなった今は、いちばん繊細な時期でしょう」


 繊細な時期。その部分に軽く息を込めた。

 ひとたび風船は破裂したとは言え、空気が抜けきったとは限らない。

 むしろ細部が弱り、次なる破裂が控えていることもあり得る。


「詮索のタネを、ひとつ余計に増やす事はないはずです」


“李下に冠を正さず”――そう言いかけて、僕は押し黙る。

 ロシアの諺では、こう言う時どう言えばよかったのだろう。

 10年。

 それだけ言葉を使ってきて、いまだ慣れるという事がない。


「――では、そうさせて貰うとしよう」


 深く息を吹き、提督。


「続きは後でだ。ともあれ、こんな所で航海は終わらない――そうだろう?」


 強い、と僕は思った。

 提督という地位に登りながらなおも、率直さを失っていない。

 無論、保身や我が身可愛さは誰にでもある。

 問題はだから、それがどれだけの割合なのか、だ。


 提督のそれは必要最小限、ひどく健全なように見える。

 顕示するでもなければ、無理に押し隠すでもない。

 当たり前のようで、それは強さ。素直な強さだ。


 同時に。


 違う、とも僕は思う。

 僕と提督とは、向かう道が違うのだと。

 その素直さは、僕の通るべき道ではないのだとも。

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